【ニッサン キャラバンGX LDF】エンジンチェックランプ・警告灯の点灯原因はDPF? 大阪府門真市の整備士がエンジントラブルを修理・交換で解決!!

 今回お客様からお預かりしたお車は「日産 キャラバン GX」です。ハイエース スーパーGLと比べると荷室の長さが50㎜、荷室の高さが5㎜キャラバンの方が広くなります。シートアレンジも多彩で、長尺物や脚立を積む事も出来ます。後部座席を倒すとサーフボード(約3メートルのロングボード)を中積みする事も出来ますので、商用だけではなくプライベートで愛用する人が多いのも頷けます。

 今回はエンジンチェックランプが点灯したとの内容でしたので、お車をお預かりして拝見致しました。診断機にかけたところ、ターボ系の異常を表す[P0299]が表示されました。この診断に対処した後ロードテストを実施しましたが、走りのニュアンスがイマイチだった為、「他にも何かあるな」と判断し、順次他の箇所も点検しながら原因を探っていきましたので、まとめたいと思います。


●お預かりしたお車

メーカー・ブランド日産 キャラバン GX
型式LDF-VWME25
エンジン (パワートレイン)ZD30DDTi(ディーゼルターボエンジン)
使用燃料:軽油
総排気量:2953cc
最高出力:170PS/3600rpm
最大トルク:36.0kgm/1800rpm
年式・初年度登録 
走行距離300746㎞

 ※ZD30DDTiは、燃料をシリンダー内に直接噴射する事で燃費が向上し、CO2排出量のカットを可能にしたターボエンジンです。またM-Fire燃焼(日産独自の技術で、予混合燃焼の温度上昇を抑える=予混合燃焼を低温の状態で行う)により、NOxやPM(黒煙)の発生や騒音を抑制します。

故障の症状

 ①エンジンチェックランプ点灯 

 ②加速しない(回転数が低い)

  ③診断機のエラーコードは[P0299]

 処置後、ロードテストするも走りのニュアンスに違和感有り。 

故障箇所の特定と診断

 診断機に表示された故障コードは[P0299]。ターボ系の異常を表すコードになります。ブースト圧(過給圧)を掛けた時に点灯するので、ホース類(バキュームホースなど)等を点検して、ブースト圧(過給圧)が低くなってしまった原因を探ります。

[P0299] ・・・ ターボチャージ過給圧異常(ターボ過給不足のエラー)
        ターボチャージャー(ターボ)=日本語で過給機を意味します。

 過給圧不足の原因としては、ターボチャージャー本体の故障や制御系のトラブル等が考えられます。他にも配管類(ホース類=ターボチャージからインタークーラー、インマニ、スロットルまでのパイプ間のジョイントホース)からの漏れ等も考えられます。

 このお車は、ターボチャージに可変バルブが付いていて、低速から高速までバルブの開閉をするだけで過給圧制御が出来る様になっています。


【空気の流れ】
空気を取り込む
 ↓
タービンで過給
 ↓
スロットルバルブで空気の流れを調整
 ↓ ←ここが負圧になるが、スロットルが全開の時、エンジンが吸い込む
     以上の空気をタービンが送り込むと正圧(ブースト圧)になる
エンジン回転時に空気を吸い込む

 不具合がどこにあるのか調査(確認)をしたところ、排気タービン(ターボチャージャー)の弁を動かす負圧ホース(バキュームホース)に穴が開いているのを発見しました。これではエンジンに、圧縮した大量の空気を供給する事が出来ませんので、給気の圧力を調整(ブーストコントロール)する事は不可能です。

 ターボチャージャー(過給機)は、元々航空機の技術として開発されたもので、排気量を増幅させるシステムです。ターボチャージャー(過給機)があるからこそ、ディーゼルエンジンの商品性能と環境性能が両立しています。従来は捨てるはずの排気ガスをエネルギーとして利用するので、効率の良い過給機と言えます。排気側と吸気側の両方に直結したタービンがあって、排気の圧力を利用して吸気側の圧力を高め、シリンダーに送る酸素の量を増幅させて高い出力を得ています。

 そして、EGRシステム(排気ガス再循環装置)と組み合わせる事で、効率がUPすると同時に、NOxの生成を抑えてくれています。

 新品の負圧ホースに交換して残留エラーを消去します。その後3000回転を10秒以上キープした状態にして圧力を確認したところ、ブースト圧が上昇する様になり、エンジンの吹けも良くなりました。警告灯も点灯せず、エンジンの出力制御は起こらない事が確認出来ました。

 しかし、ロードテストの際に「走りのニュアンス」に違和感があり、再度点検を実施。結果DPFの燃焼温度に不具合がある事が判明しました。ターボ系に異常(トラブル)が起こると十分に燃焼せず、結果DPFに負荷がかかりトラブルに繋がったと思われます。

 前述しましたが、EGR(Exhaust Gas Recirculation=排気ガスの再循環システムシステム)は、車外に排出されるはずの排気ガスの一部を、吸気ポート側に還流して、燃料室に送る仕組みです。この時還流されている排気ガスにはススが含まれており、これがEGRバルブやエアシャッター、インマニ、吸気弁等に徐々に固着していきます。それにより各パーツ及びその周辺に不具合が発生します。写真でもわかる様に、EGRバルブの機構内はススが蓄積している状態でした。

 ススだけならまだしも、酷くなるとここにオイルミストが加わり、固着して落ちなくなってしまいます。


【DPF=ディーゼル微粒子捕集フィルター(Diesel Particulate Filterの略)】  DPFは排ガスを浄化する為のディーゼル車特有の装置です。 

 EGRやインマニ内に蓄積したススは詰まりの原因になり、正常な吸排気が出来なくなっていきます。正常な吸排気が出来ないという事は、排気温度が異常になり、その結果ススの量が増えてしまいます。ススは本来DPFがフィルターになって大気中に放出しない様になっていますが、DPF内部に溜めておける量にも限界がありますので、DPFが通常より早めに目詰まりを起こしてしまう事になります。

 当初の診断結果は「ターボ異常」からスタートしましたが、このターボ異常がDPFのトラブルに波及していた事がわかりました。DPFの詰まりがマフラーの詰まりになり、結果排ガスが抜けない。排ガスが抜けないという事は、エンジンに負荷がかかっていて、ターボも回らない状態だった事が判明しました。 

●故障修理の内容と費用

作業内容・部品等工賃部品代
初回診断料30,000円 
EGRホース交換42,000円10,800円
DPFコンバーター交換24,000円148,000円
バキュームホース交換18,000円21,610円
強制再生及びエラー消去8,000円 
その他(ボルトガスケット類・シチューブ類・ショートパーツ・DPFクリーナー)等 44,950円
合計122,000円225,360円
消費税34,736円
総計382,096円
2024年9月現在

修理後の様子

 負圧ホース(バキュームホース)交換後のロードテストの際には、「走りのニュアンス」に違和感があり、ちょっと違うなぁ~と言う感じが拭いきれませんでしたが、DPF交換後再度ロードテストを行ったところ、「これこれ♪!!」と思える手ごたえを感じました。DPFを交換して明らかに状況は良くなりました。

 DPFはとても高価ですので、交換せずに済んだら良かったのですが、今回の状況はそういう訳にもいかず、お客様にお車の状態をご説明させていただきました。少しでも安く済ませたいとのご意向も有りましたので、お客様のご理解を得た上でリビルト品(再生部品)を使用してお修理させていただきました。

 修理後、もちろん走りのニュアンスもバッチリで、お車を良好な状態に整備をしてご納車させていただきました。

まとめ

 ディーゼルエンジンは、熱効率が高いのにコンパクトな原動機として長年愛用されてきました。しかし自動車の排気ガスに含まれるNOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)が環境や人体に悪影響を与えるからと、日本では1968年に大気汚染防止法が、1992年には自動車NOX法が制定され、2002年には規制強化等がスタートしました。

NOX(窒素酸化物)窒素酸化物とは、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)が主成分であり、総称としてNOx(ノックス)と呼ばれています。
自動車の排出ガスの窒素酸化物の大部分は一酸化窒素として排出されますが、大気中で酸素やオゾンなどと反応し、二酸化窒素に変化します。また窒素酸化物は酸性雨や光化学スモッグの原因にもなります。この為大気環境基準では、健康への影響を考慮して二酸化窒素について定めています。
PM(粒子状物質) PM=Particulate Matter自動車排出ガス等人の活動に伴って発生するものと、自然界由来の両方があります。呼吸器系の各部位へ沈着すると発ガン性等人の健康に影響を及ぼすと言われています。環境基準では、粒径(大きさ)が10μm以下の浮遊粒子状物質(SPM)について定めています。

 昔のガソリンエンジンはディーゼルエンジン以上にNOxを排出していましたが、三元触媒の開発によって、現在ではガソリンエンジンからは殆どNOXは排出されなくなっています。それに比べてPM(粒子状物質)は、ディーゼル排気ガス微粒子とも言われ、人体に影響があると指摘されてきました。

 PMの成分はスス(黒煙)・カーボン、SOF(有機溶剤可溶分)、硫黄が化学変化した硫酸塩などで、その内の約4割をスス・カーボンが占めています。このススやカーボンの周りに未燃焼潤滑油や未燃焼燃料硫酸ミストなどが付着しています。

 当初はディーゼルエンジンそのものが悪く言われる様な風潮もあり、「ディーゼル撤廃」を決める国迄ありましたが、最近ではディーゼルエンジンを搭載した車がジワリジワリ増えてきたように思います。

 国内では唯一ディーゼル継続を打ち出していたマツダが、2017年に新エンジンSKYACTIV-D1.8を発表しました。翌年にはBMWやフォルクスワーゲン、ダイムラーが新たなディーゼルエンジンを発表する等、ディーゼルエンジンを取り巻く環境が大きく転換点を迎えたのはこの頃ではないかと思います。

 ディーゼルエンジンが排出する有害物質(NOxとPM)を減らす事と、燃費の向上は本来相反関係にあります。しかし様々な技術開発が行われ、またそれらを組み合わせる事で、排出ガスのクリーン化と燃費向上を同時進行で改善してきました。こうした努力の甲斐あって、ガソリンエンジンに比べて燃費が良く、且つ環境性能を併せ持ったディーゼルエンジンが社会に認められ受け入れられ、過去の悪いイメージは払しょくされて今に至っています。実際に2021年~2026年にかけてディーゼルエンジンの市場は緩やかに成長すると予測されていますし、世界を市場と見た時には新興国の成長がディーゼルエンジンの需要を押し上げている事は言う迄もありません。

 こうした時代の流れの中で、排ガス規制をクリアする為に生まれたのが、EGR(再排気循環)という技術です。EGRは排出ガス内の有害物質を低減するため、また燃費向上の為に欠かせない技術です。特に近年では、排気ガスの温度を冷却水によって低くしてEGR(再排気循環)の効果をより高めるEGRクーラーをプラスした、「クールドEGR」が幅広く取り入れられています。

 また、ターボチャージャーはより多くの空気を得る事でエンジン出力をUPさせています。ディーゼルエンジンに搭載される事で高回転時のパワー不足を補うだけでなく、燃費の向上、環境への配慮、静粛性の向上に効果が期待出来ます。

 「燃費と環境への配慮。」技術がどれだけ進歩しても、ディーゼルエンジンとは切っても切れない言葉の様に感じますが、近年ではエンジンECUが、ディーゼルエンジンを総括的にコントロールしてくれています。燃料の最適化、EGRシステムや排出ガス後処理システム等について、ECUが総括的に制御する事で、ディーゼルエンジンの能力は最大限に引き出されています。

 これら多種多様な技術の融合が、今の車社会を支えています。ただ忘れてならないのは、「メンテナンスしなくていい車」など存在しないという事です。車は2万~3万もの部品で出来上がっています。交換部品も多くまたオイル・フルードも欠かせません。使用年数を重ねれば経年劣化による摩耗や劣化を避けて通る事は出来ません。それはターボチャージャーやEGRシステム、DPFと言えど例外ではありません。

 まずは、日頃のケアや点検・メンテナンスに加え、車に優しい環境づくり(運転も含めて)をおススメ致します。そうする事で、結果的にDPFトラブルや故障を未然に防ぎ、致命的なダメージにブレーキを掛ける事が出来ます。

 ディーゼル車は、ガソリン車に比べると車両価格は少し高めになりますが、ランニングコストが抑えられますし、ガソリンスタンドに行く回数も少なくて済みます。長く愛用する為にも、日頃のメンテナンスについてご検討頂けたらと思います。またお車の事で違和感がある、修理が必要かな、とお感じになられましたらお気軽に東伸自動車までお問い合わせ下さい。車を長持ちさせて且つトラブルを防ぐには、メンテナンスが最善の策です。お車の事でトラブルやお困り事がございましたら、大小に関わらず東伸自動車までお気軽にお問い合わせ下さい。

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