【ハイエースのDPF】について大阪 門真市の整備士が詳しく解説します!

わたしたち人間が生活していく中で発生する大気汚染の問題は、世界中の国々でさまざまな対策が行われています。
アジアなどの急速な工業化により経済活動の規模は大きくなり大気汚染物質の排出はますます増大していくため、健康への影響も心配される重大な課題です。

大気汚染の主な原因は、自動車や工場から出る粒子状物質「PM( Particulate Matter)」や窒素酸化物「NOx」です。
さまざまな調査研究によりディーゼル車の排気ガスが大きく影響していることがわかっています。

● 自動車NOx・PM法

大気汚染の主な原因のNOxやPMは発ガン性のおそれもあり国民への健康が脅かされることが懸念されているため、自動車NOx・PM法(平成13年6月改定)によって規制されることとなりました。

大都市地域においては、「車種規制」が制定され、所有・使用可能な車両が制限されています。もちろん門真市も含まれています。

大阪府(37市町)

大阪市、堺市、岸和田市、豊中市、池田市、吹田市、泉大津市、高槻市、貝塚市、守口市、枚方市、茨木市、八尾市、泉佐野市、富田林市、寝屋川市、河内長野市、松原市、大東市、和泉市、箕面市、柏原市、羽曳野市、門真市、摂津市、高石市、藤井寺市、東大阪市、泉南市、四條畷市、交野市、大阪狭山市、阪南市、島本町、忠岡町、熊取町、田尻町

環境省・国土交通省 「自動車NOx-PM法の車種規制について」参考

大阪府の流入車規制(令和4年4月1日付け廃止)

大阪府では大阪府に流入する車両についても、「大阪府生活環境の保全等に関する条例」に基づいて流入車規制が制定されていましたが、令和4年4月1日付けで廃止されることになりました。

「大阪府では、平成21年1月から、「大阪府生活環境の保全等に関する条例」(以下、「本条例」といいます)に基づき、トラック、バス等の流入車規制(運行に関する規制)を実施しています。
流入車規制について、これまで事業者や関係団体、行政等の取組により排出ガスの基準を満たさない非適合車の流入割合が1%未満となるなど、大きな効果が得られました。ステッカー制度をはじめ事業者に課してきた義務のうち、目的を達成したものについては終了もしくは緩和とし、本条例及び同条例施行規則の一部を改正しました。」

大阪府 「大阪府生活環境の保全等に関する条例」の一部改正について(流入車規制は令和4年4月1日付で廃止になりました)引用


「〇 大阪府では、すべての測定局において二酸化窒素等の大気環境基準を早期に達成することをめざし、平成21年(2009年)1月から条例に基づき流入車規 制を実施してきた。その結果、対策地域外から流入する排出ガス基準に適合しない自動車(非適合車)の割合は、規制前では17%(平成19年度(2007年度))であったものが、0.3%(令和元年度(2019年度))まで低下した。

〇 また、この規制に加え、関係機関と連携し、様々な自動車環境対策を実施した結果、自動車からの窒素酸化物等の排出量は着実に減少し、すべての測定局において大気環境基準を継続的に達成している。

〇 このため、大阪府は令和元年(2019年)12月に「今後の大阪府生活環境の保全等に関する条例のあり方」について大阪府環境審議会に諮問し、流入車規制を廃止した場合に、NO2日平均値の年間98%値が0.04ppm以上である比較的濃度が高い測定局に及ぼす影響や局地汚染の改善への影響、さらに電動車普及による窒素酸化物等の削減効果について審議・検討した。

〇 その結果、本規制の廃止による大気環境への影響は軽微であり、電動車普及による窒素酸化物等の削減効果が十分大きかったことから、令和3年(2021年)11月の同審議会からの答申を踏まえ、本条例による流入車規制を廃止した。

※ 引き続き、自動車NOx・PMによる対策地域内での車種規制適合車の使用をお願いします。」

大阪府 流入車規制(令和4年4月1日付け廃止)引用

● DPFとは

自動車のディーゼルエンジンから排出される発ガン性の疑いのある有害な粒子状物質(PM、主にスス)を大気中に排出しないように、「DPF」というディーゼル・パティキュレート・フィルター(Diesel particulate filter)によってPMを約80%浄化して除去することが出来ます。

DPF装置は一般的にエンジンとマフラーの間に装着されています。

昔は、ディーゼルエンジン車はもくもくと黒い排気ガスを吐き出して走行するのが当然でしたが、現在はDPFを搭載した「クリーンディーゼル」エンジン車の普及が進み、大気汚染物質の低減への取り組みが進められています。

DPFはさまざまなメーカーで搭載されており、メーカーごとに呼び方が異なります。

DPF      :日産、マツダ、三菱ふそう
DPR      :トヨタ、日野
DPD      :いすゞ
UDPC   :UDトラックス


今回は、

トヨタ「ハイエース」のDPF(DPR)

に的を絞って説明していきましょう。

DPRとは、Diesel Particulate Active Reduction Systemの略称で、排出ガス浄化装置のことです。
本記事では、メーカー共通の説明箇所についてはDPFで統一して表記しています。

● DPF自動再生

PM(スス)の蓄積量をメーターパネル内で確認することができます。まだ見たことがない方は是非メーターパネルを確認してみてください。

エンジンを動かせばススは蓄積していきますので、当然メモリは増えていきます。
一定量のススが溜まると、コンピュータが判断し自動でエンジンの回転数を上げススの燃焼を開始してくれます。これをDPF自動再生といいます。

自動再生中はエンジンを切らないように気を付けてくださいね。

エンジンを切ってしまうと燃焼が完全に出来ずDPFつまりを引き起こす場合があるからです。

下記の条件では、自動再生されないことがあります。
自動再生ができない状態が継続すると、DPF警告灯が点滅しDPF手動再生が促されます。

・渋滞などで低速(約15km/h 以下)で走り続けている場合
・短距離走行やDP触媒が暖まらない走行の繰り返し
・長時間のアイドリング状態

● DPF警告灯の点滅

DPFの自動再生を何度も繰り返していくと、燃焼しきれないススが徐々に蓄積していきます。
DPFの自動再生ではススが取り除けなくなってしまう状態になると、DPF警告灯が点滅し始めます。
合わせて排出ガス浄化スイッチの作動表示灯も点滅し始めます。

排出ガス浄化装置警告灯
排出ガス浄化スイッチ

DPF警告灯が点滅し始めても慌てなくて大丈夫です!
もしメーターパネルにこのDPF警告灯が表示されている場合は、DPFマフラーが詰まってきましたよというサインです。

DPF警告灯が「点滅」であればご自身でDPF手動再生の作業を行うことが出来ますのでご安心ください。
なお、排出ガス浄化装置スイッチが点灯している場合のみ、手動再生が行えます。

DPF警告灯点滅中は、約50kmまでは走行しても問題はありません。
しかし、警告灯が「点滅」から「点灯」に切り替わってしまうとドライバー側で作業を行うことが出来なくなり、ディーラーや整備工場での対応が必要となりますので、出来る限り早く作業を行うようにしてください。

DPF手動再生の方法

トヨタのDPF(DPR)手動再生の方法は以下の通りです。

 →DPF搭載車を所有している方は、お手持ちのマニュアルを確認してみてくださいね。


  1. エンジンを止めずに、安全な場所に車両を停車させます。

    ※ 作業中は、高温の排気ガスが出ますので、排気口付近に可燃物が無いこと、人がいないことを確認してください。

    ※ 一酸化中毒になる恐れがありますので、排気ガスを吸わないよう風通しの良い場所で作業してください。

    ※ 燃焼処理中は排気管や排気ガスが高温になりますので触れないようにしてください。


  2. パーキングブレーキを確実に引き、チェンジレバーを「P」の位置にします。
    (MT車は「N」の位置、AT車は「P」の位置)


  3. 排出ガス浄化スイッチを押します。(※1)

    スイッチの作業表示灯とメーター内の警告灯が点滅から点灯に切り替わります。
    アイドリング回転数が上昇し、DPF再生(PM燃焼)が始まります。

https://toyota.jp/sc_files/media/manual/hiace/hiace_commuter_201503.pdf) 参考


DPF警告灯と排出ガス浄化スイッチが消灯し、アイドリング回転数が元に戻れば作業完了です。

作業は約15~40分で完了します。
手動再生目安時間を越える場合は、触媒の劣化やインジェクターの故障などが考えられますので、ディーラーや整備工場に早めに相談してください。

もしDPF手動再生を中断した場合は、DPF警告灯が点滅から点灯に切り替わる前に、早めに手動再生を完了してください。(■DPF警告灯の点灯 参照)

※手動再生中にアクセルペダルを踏んでしまっても処理中断となりますので、はじめから操作しなおしてください。

(※1) DPF搭載初期の車両には、排出ガス浄化スイッチが付いていない場合があります。
ディーラーや整備工場にて対応してもらってください。
カバーの後ろにDPFスイッチのカプラが付いている車両ならDPFスイッチを取り付けることも可能ですので、東伸自動車にお越しの際はご相談ください。

DPF手動再生が完了しない場合

以下が原因で、DPF手動再生が完了しない場合があります。

  • DPFの故障
  • インジェクターの故障・詰まり
  • 排気シャッターバルブの故障
  • EGRクーラー(バルブ)の詰まり
  • その他吸排気経路のカーボン詰まり

これらの事象を解消するためは、ディーラーや整備工場での対応が必要となりますので、出来るだけ早く相談してください。

● DPF警告灯の点灯

DPF警告灯が点滅していたにもかかわらず、DPF手動再生を行わずに走行を続けているとDPF警告灯は点滅から点灯に切り替わります。
エンジンに制御がかかり(フェイルセーフ)、速度が40~50kmに制限されてしまいます。

DPF警告灯が点灯すると排出ガス浄化装置スイッチが機能しなくなり、ドライバー側ではチェックランプを解除することが出来なくなってしまいます。
専用の診断機を所有しているディーラーや整備工場にてチェックランプ解除を行ってもらう必要があります。

ディーラーや整備工場のお世話になる前に、DPF警告灯が点滅したら早めに手動再生することをお勧めします。

DPF警告灯が点灯している状態で走行を続けると故障に繋がりますので、すみやかにディーラーか整備工場に連絡してください。
なお、DPF警告灯とエンジンチェックランプが同時に点灯すると、ほとんどの場合、手動再生できなくなっています。

エンジンチェックランプ
DPF警告灯とエンジンチェックランプが同時に点灯

DPF強制再生

DPF警告灯が点灯しディーラーや整備工場に持ち込み、DPF強制再生が必要な状態であると判断した場合、診断機を車につなぎDPF強制再生を行います。

DPF強制再生ステータスが[Ready]から[作動中]になります。
メーターパネルの蓄積量がどんどん減っていきます。
強制再生はおよそ20分で終わります。DPF強制再生ステータスが[完了]に変わっていたら[Complete]を押して作業終了です。
排ガス浄化装置スイッチの点灯もこの時点で消えます。

診断機(DPF強制再生) ※トヨタはDPR強制再生

再生で燃焼出来るものはススのみです。燃焼出来ないものは詰まったままとなります。
再生で燃焼できないものの主な原因は、エンジンオイルの金属系添加剤の燃えカス(アッシュ)です。

エンジンオイルは車種ごとに相性の良いオイルがあります。エンジン本体の劣化や故障にもつながりますので、純正のメーカー指定オイルか、メーカーが指定する品質を下回らないエンジンオイルを使用してください。
また、こまめにエンジンオイルを交換することがアッシュの堆積を緩やかにし、DPFマフラーの劣化を食い止めることとなり、出費を抑えることにも繋がると考えております。

DPFの自動再生、手動再生、強制再生を繰り返していく上でDPFマフラー内に蓄積されたアッシュは、アッシュ自体を取り除くか、DPFマフラー交換しか対処方法はありません。

ちなみに、ハイエースのDPRマフラーを交換した場合、部品代(約30万円)+作業工賃がかかります。非常に痛い出費ですね…。
そして、作業完了まで数日かかってしまいます。DPF搭載車両を業務利用している方は業務にも支障が出てしまいますね…。

多額の出費を抑えるためにもドライバーの皆さんが出来ることとして、DPF警告灯が点滅したら素早くDPF手動再生を行うようにしましょう。
完全に詰まってしまう前であればDPFマフラーフィルター洗浄は可能です!
出来るだけ早くディーラーや整備工場に連絡してください。

● DPFマフラーフィルター洗浄

下記のような状況でお困りの場合は、DPFマフラーのつまりが考えられますので、DPFマフラーのフィルター洗浄をお勧めします。

・DPF手動再生の時間が長いDPF手動再生に1時間以上かかってしまう。
(通常なら15~40分で完了)
・DPF警告灯が頻繁に点滅都度、手動再生を行う必要があります。
作業完了までエンジンを切ることが出来ず、業務に支障が出る場合があります。
・燃費が悪い自動再生、手動再生の回数の増加、再生に時間がかかっている事が原因と考えられます。
・エンジンの吹けが悪いフィルターが詰まっていると考えられます。
・チョイ乗りが多くてススが蓄積しているDPFはエンジンをかけてすぐに行う事が出来ないため、短距離移動の繰り返しでは再生がうまく行えていません。
時々エンジンを回して暖機させ、DPF自動再生が正常に行われるようにした方が良いでしょう。

【 DPFマフラーのフィルター洗浄工程 】

① 試運転
試運転を行い、動作確認をします。
 
② 故障診断
洗浄前のマフラーの状態をチェックします。
EGRバルブの補正状況やその他のストリーミング数値、エラーコードを確認します。







③ 診断機での強制再生
強制再生の方法は、■DPF強制再生 を参照
→DPFの状態を確認せずに強制再生を行っていると、異常燃焼を引き起こしてしまい溶損の原因となってしまいます。
■DPFマフラー溶損 参照)

 

④ 排気温度差・差圧チェック
送風機を用いて差圧を測定します。
→詰まりが多いと差圧測定値が大きくなります。
→強制再生を2、3回行っても数値が改善されない場合は次の工程に進みます。






⑤ DPFマフラー取り外し・分解
溶損・クラックなどの修理できない劣化が無いかチェックします。

⑥ 洗浄液浸漬
DPF本体を洗浄液に浸し、内部の汚れを分解して取り除きやすくします。

⑦ 洗浄
高圧洗浄機を用いて、フィルターに詰まっている棒状のアッシュや油分などを取り除く。

⑧ 乾燥
ススやアッシュが無くなっている事が確認出来たら、フィルター内に残った水分を完全に蒸発させます。

⑨ その他の吸排気経路の清掃
EGRバルブなどの吸排気経路にもススが溜まっている事がありますので清掃を行います。

⑩ DPFマフラー取り付け
清掃済みのDPFマフラーを取り付けます。

⑪ DPFマフラー強制再生・差圧チェック
試運転を行った後、診断機での強制再生を行い、排気温度や差圧を確認します。
→600℃程度まで上がればひとまずOKとします。
 
試運転を繰り返し、次に警告灯がつくまでのインターバルを確認します。
→インターバルが1000㎞以下だった場合、インジェクターやEGRバルブ、燃焼ポンプ等の故障が起きている可能性がありますので、再度、故障箇所を探っていきます。

⑫ 作業完了
動作に問題が無ければ作業完了となります。


● 当社のDPFマフラーのフィルター洗浄の費用は、15万円~ です。

● DPFマフラー溶損

自動再生、手動再生、強制再生といった「再生」を行うとき、マフラーは600℃近くまで上昇することになりますので、当然DPFマフラーへの負担も大きくなります。
触媒本体は熱に強いセラミック素材で作られているとはいえ、600℃近い温度で長期間、何度も繰り返していると劣化していきます。
劣化がひどくなり、DPFが溶けてしまうことを溶損といいます。

手動再生のインターバルが短くなり、DPF警告灯が頻繁に点滅するようになってくると、アッシュも堆積していきDPFマフラーの溶損に繋がる要因となりますので、注意が必要となってきます。 (■DPF強制再生 アッシュの説明参照)

アッシュの堆積を出来るだけ少なくすることがDPFマフラーを長持ちさせることに繋がるといえるでしょう。

DPF手動再生が頻繁に促されるようになりましたら、DPFマフラーのフィルター洗浄やEGRバルブなど吸排気経路の整備を行うことをお勧めします。
燃費が悪い、エンジンの吹けが悪いなど、何らかの違和感があった場合はわれわれ整備工場に相談してみてください。

また、ディーラーや整備工場での作業が溶損に繋がっている可能性が全く無いとは言い切れませんが…
整備士の私としては、DPFやその他吸排気経路などの状態を十分に確認した上で状況に応じて強制再生を行って頂けていると信じたいです。

DPFが溶損すると、PM除去フィルターとして機能せず、基準値を超えるPMを排出こととなり、車検が通らない可能性が非常に大きいです。
車検を通すためにはDPFマフラーの交換を行うことが不可欠です。

● まとめ

東伸自動車では、メーカー指定のエンジンオイルを使用してこまめに3000km未満で交換を行うこと、一定の距離に達した段階でDPFの強制燃焼を実行すること、EGRバルブや触媒廻りの分解洗浄を行うことが予防策になると考えております。

メンテナンスの際には、DPFの整備・点検だけでなく、インジェクターやEGRバルブ、その他吸排気経路、各種センサーの整備・点検を合わせて行うことをお勧めします。

今回の記事を読んで、少しでもDPFマフラーに興味を持って頂けたら嬉しいです。

東伸自動車ではトヨタのDPRマフラーだけでなく各メーカーのDPFマフラーのフィルター洗浄も出来ます。

DPFマフラーのフィルター洗浄をしてみたい!愛車のDPFマフラーの状態を確認してみたい!など、DPFマフラーについて相談したい事がございましたら、どんな些細なことでも構いませんので、東伸自動車へのご連絡をお待ちしております。

〒571-0044
大阪府門真市松生町6-21

有限会社東伸自動車
(担当:熊野・吉村まで)

電話:06-6916-3121