門真市の整備士が語る ブレーキの分解清掃

もしブレーキを踏むときにキーキーと音がするなら…
それは「ブレーキ鳴き」という状態です。

ブレーキ鳴きしていても不具合が生じていない場合もありますが、ブレーキを踏むたびにブレーキ鳴きをする場合は、ブレーキの不具合を疑った方が賢明かと思われます。

ブレーキ鳴きやブレーキの効きが悪いなど、ドライバーの皆さんが走行していて明らかにいつもと何か違うな?と思える状況であれば、われわれ整備工場に相談して頂くことが可能ですが、ドライバーの皆さんが気付かない程度のわずかな変化が生じているかどうかは日頃のメンテナンスで確認するしかありません。

ブレーキの不具合は重大な事故に繋がりますので、定期的なメンテナンスが重要となります。

ブレーキは制動装置といい、車検時に整備すべき項目として法律で定められている重要な保安部品です。
車両重量が1tを超える自動車が時速60㎞で止まれない!という状況を想像してみて下さい。
恐怖でしかないですよね!
ですから、制動装置は重要なのです。

しかし、車検整備の際に行われる制動装置のメンテナンスのやり方は各社様々で、ドラムやキャリパーを分解するにとどまる業者もあれば、ライニングやインナーカップの交換を行ったり、キャリパーのインナーキットを交換する業者もあります。

一概にどの整備が良いかは単純に述べることは出来ませんが、間違いなく言えるのはそのお車の使用状況やお使いになられる方に合わせた適切なメンテナンスを行うことが重要であるということです。

さて、今回は自動車にとって重要な装置であるブレーキの分解清掃について説明していきましょう!


目次
ブレーキの種類
 ドラムブレーキ
 ディスクブレーキ
ブレーキ分解清掃の落とし穴
ドラムブレーキの分解清掃の工程
ディスクブレーキの分解清掃の工程
アジャスターのクリアランス調整
ホイールシリンダーのインナーカップ交換
まとめ

ブレーキの種類

車の前後4つの車輪すべてにブレーキがついています。車輪と一緒に回転する回転体をブレーキの摩擦力を利用して自動車を減速させ停止させることを「制動」といいます。

ブレーキの種類にはドラムブレーキとディスクブレーキがあります。 前後輪すべてドラムブレーキ、前後輪すべてディスクブレーキ、前輪・後輪でドラムブレーキとディスクブレーキなど、車の用途に合わせてブレーキの組み合わせが異なります。


ドラムブレーキ

最近ではディスクブレーキがサイドブレーキを兼ねる事もありますが、サイドブレーキの多くがドラムブレーキとなっています。

車軸とともに回転するスチール製の円筒状のブレーキドラムの中に内蔵されているブレーキシューに貼られたライニングと呼ばれる摩擦材をブレーキドラムの内周に接触させて制動を行います。液圧によって作動するピストンにてブレーキシューが広げられます。

ブレーキシューはリーディングシューとトレーディングシューの2個1組で作動します。
ライニングは非鉄金属や無機繊維、銅繊維などを結合材である樹脂とともに加熱成型したものです。


セルフサーボ効果と呼ばれる自己倍力作用により、進行方向に対して前側(リーディング側)のシューが回転しようとする力がドラムに密着しようという力が働き、小さな力でも大きな力となり、より強い制動力を発揮します。

エンジンがかかっていない状態で後輪に強い制動力が求められるサイドブレーキにドラムブレーキが採用される理由となります。

ディスクブレーキに比べて放熱性が悪くブレーキの効きが安定しづらいことはデメリットですが、軽量であることにより軽自動車に向いている点や製造コストが安いので、車体価格が抑えられる点がメリットとなります。

ドラムブレーキは、ダストカバーを外さないとライニングやホイールシリンダーなどのブレーキの構造を見ることが出来ません。
ジャッキアップやタイヤ取り外しなどの作業が必要となりますので、ドライバーの皆さんによる日常点検では点検することは出来ません。

後輪に装着されているドラムブレーキはほとんど減らないのですが、ドライバーの皆さんが目視確認することが出来ませんので、車検時には分解整備にてドラムブレーキの減りを確認することをお勧めします。

ブレーキをかけるたびにブレーキシューに貼っているライニングはすり減っていきますので消耗品といってよいでしょう。
摩擦によって摩擦材がすり減りブレーキの制動が得られなければ自動車を安全に止めることが出来ません。

ライニングの厚さが1㎜以下になる前に交換した方が良いでしょう。走行距離5~10万キロが交換時期の目安とされていますが、車種や積載荷重、ドライバーの走行パターンなどの使用条件によってライニングの摩耗具合は変わりますので、車検時には分解整備を行い、ライニングの残量を確認し、必要であれば交換してください。

また、故障の一番原因としてオイル漏れが挙げられます。ホイールシリンダーからオイルが漏れていないかを確認します。
漏れている場合、インナーカップの劣化が考えられますので交換してください。
オイルが漏れると油圧が落ちてブレーキの効きが悪くなり、ブレーキオイルが規定値以下になってしまうとブレーキが効かなくなってしまいます。

また漏れたオイルがライニングについたままブレーキを使用していると摩擦によって火災が起こる可能性もあり非常に危険です。
安全のためにも、オイルが漏れていなくても車検時にインナーカップを交換することをお勧めします。


特定整備記録簿(分解点検)

これらの作業は分解整備でしか行うことが出来ませんので、定期メンテナンスの際にしっかりと点検・整備してもらうことをお勧めします。


ディスクブレーキ

自動車の前輪に使われることが多く、高性能な車や高級車、重量の重い大型車では、強い安定した制動力が求められますので、前後輪にも使われることがあります。

安定した制動力と放熱性に優れていること、水分や汚れをはじきやすくメンテナンス性が良いというメリットがあり、高速走行時のブレーキングに向いていますので、スポーツモデルの前後輪に採用されることが多くなっています。

車軸とともに回転する円盤状のディスクを、キャリパーの内側に取り付けられているブレーキパッドと呼ばれる摩擦材で両側から挟み付けて制動を行います。円盤状のディスクのことをブレーキディスクやディスクローターと呼びます。 ドラムブレーキのような自己倍力作用がありませんので、ドラムブレーキと同様の制動力を発揮するためにはブレーキパッドをディスクに強く押し付ける必要があります。

ブレーキパッドの厚さが2㎜以下になる前に交換した方が良いでしょう。
走行距離3万キロ~4万キロが交換時期の目安とされていますが、車種や積載荷重、ドライバーの走行パターンなど使用条件によってブレーキパッドの摩耗具合は変わりますので、車検時には分解整備を行い、ブレーキパッドの残量を確認し、必要であれば交換してください。

ブレーキディスクも摩耗しますので、厚さが使用限界値以下になる前に交換しましょう。

摩耗したブレーキディスクを使用すると、温度上昇と強度低下によって、下記のような状態が生じ重大な欠陥や故障に繋がります。

  • ブレーキディスクにクラック(熱亀裂)が発生する
  • ブレーキディスクが変形し振動(ジャダー)や騒音が生じる
  • ブレーキディスクの厚みが減りディスクとパッドのすき間が広くなりペダルストロークが長くなる

振動や騒音など何らかの違和感があれば、早めにディーラーが整備工場で点検を受けましょう。

また摩耗したディスクを使用し続けることにより、さらにベーパーロック現象とフェード現象の2つの現象も引き起こす場合もあります。


ベーパーロック現象
坂道を下るときにフットブレーキを使いすぎることで摩擦熱が発生し、その摩擦熱がブレーキフルード(ブレーキオイル)に伝わることによりブレーキフルードが沸騰して200℃以上となり気泡が発生しブレーキペダルを踏んでもブレーキが効かなくなることです。

下り坂ではエンジンブレーキを活用するようにしましょう。

また、ブレーキオイルが劣化し沸点が低下した状態でブレーキを使用し続けた場合も、ブレーキオイルの気化によってベーパーロック現象が発生する場合がありますので、ブレーキオイルも定期的に交換することをお勧めします。

フェード現象
ブレーキを多用することによって摩擦熱が発生し、摩擦材の熱分解で発生したガス膜がブレーキローターの間に入り込み、摩擦力が低下することでブレーキの効きが悪くなってしまうことです。
フェード現象が起こっている状態でフットブレーキを使用し続けるとベーパーロック現象が発生し完全にブレーキが効かなくなってしまいます。
 
2013年に大分県で発生した大型観光バスの路外転落事故は、ブレーキが効かなくなり減速出来ずにガードレールを突き破って斜面を滑落しJRの線路に衝突した事故であり、フットブレーキの多用によってフェード現象が発生しブレーキが効かなくなったことが主因であると大分県警が判断し、運転手は自動車運転過失傷害容疑で書類送検されました。
乗客43人が重軽傷を負い、運転手も重症を負う事故で、警察はメーカーとともに車両不具合の可能性も含めて検証を行いましたが、車両の欠陥や故障は無く、フットブレーキの多用によるフェード現象でブレーキが過熱して効かなくなったものと結論づけました。


ブレーキ分解清掃の落とし穴

ブレーキ分解清掃は、主にダスト清掃やグリス塗布といった簡単な作業ですが、業者によって内容が異なります。

ブレーキ分解清掃といっても、ドラムを外すだけでも分解清掃を行ったと記録する業者もあれば、細かいところまで丁寧に分解清掃した上で点検整備記録簿に記録する業者もありますが、どちらの場合も点検整備記録簿には分解清掃としか記録されません。

より丁寧で細かくメンテナンスを行ってもらえる業者に依頼出来るよう、見積もりの際にブレーキ分解清掃の内容を十分に確認するようにしましょう。


ドラムブレーキの分解清掃の工程

特定整備記録簿の分解点検の項目をチェックしていきます。

特定整備記録簿(分解点検)


  1. タイヤを取り外す前に、タイヤを手で回して極端に重く動きが鈍くないかを確認します。

  2. タイヤを外します。

  3. ブレーキドラムを外す。
    →ブレーキドラムの取り外し方は車種で異なります。

  4. ライニングを固定しているクリップやピンを外し、ライニングを外します。

  5. 左右のライニングをつなぐスプリングを外します。

  6. サイドブレーキワイヤーをパーキングブレーキから外します。

  7. 分解点検項目をチェックします。

    〇ドラムとライニングとのすき間

     →ライニングを新品交換した場合は厚みが増しますので、その分アジャスターの調整が必要となります。
     
     アジャスターを最も短い状態にしておき、シュークリアランス調整を行います。(■アジャスターのクリアランス調整 参照)


    〇シューの摺動部分及びライニングの摩耗

     →ライニングの厚みが使用限度を下回る前に、交換する必要があります。


    〇ドラムの摩耗及び損傷

     →目視で確認します。ドラムの内径が使用限度の基準値を下回る前に、交換する必要があります。


    〇ホイールシリンダーの液漏れ
     →液漏れがないか目視で確認します。


    〇ホイールシリンダーの機能、摩耗及び損傷
     →ホイールシリンダー内部のオイルシールやインナーカップが劣化していた場合は分解し交換します。(■ホイールシリンダーのインナーカップ交換 参照)


    ※ホイールシリンダーを分解する時にはグリスやオイルフルードがライニングに付かないように注意します。

    ※ホイールシリンダー分解時はオイルフルードのタンクが空にならないようにします。

    ※ブレーキラインに空気が混入したら4輪すべてのエア抜きをしなければなりません。

  8. ブレーキクリーナーとウエスを使ってドラム内部を隅々まで清掃します。

  9. 可動部であるライニングと接触する部分にグリスを塗布します。
    →グリスはブレーキ用を使用します。

  10. サイドブレーキワイヤーをパーキングレバーに組み付けます。

  11. パーキングレバー側のライニングを固定します。

  12. スプリングとアジャスターを組み付けた反対側のライニングを引っ張りながらはめ込みます。

    →ライニングを両方固定してから最後にスプリングを掛けても良いです。
     
    先に組み付けておくことで、不意にスプリングが外れて作業者の方に飛んで来るのを防ぐ事が出来ます。

  13. 下側のスプリングをあらかじめライニングに装着し、引っ張るようにはめこんで組付けます。

  14. 反対側のライニングを固定すればドラムブレーキの組み付けは完成です。
ドラムブレーキ分解清掃


ディスクブレーキの分解清掃の工程

特定整備記録簿の分解点検の項目をチェックしていきます。

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特定整備記録簿(分解点検)


  1. ブレーキを踏んでタイヤがロックされ動かないこと、ブレーキペダルを離すとタイヤが正常に回ることを点検します。

  2. タイヤを外します。

  3. キャリパーの取り付けボルトを外します。

    →付着しているグリスをウエスなどで拭き取ります。

  4. ブレーキディスクの摩耗や損傷がないか目視で点検します。

    →ブレーキディスクの厚さが使用限度値を下回る前に交換しましょう。

    →ブレーキディスクがレコード盤のような状態になっていたら研磨します。

  5. ブレーキパッドを外して各部品を清掃します。

    →表面に古いグリスが付着しているのでパーツクリーナーなどを使用してグリスを取り除きます。

    →溝などに詰まっているダストもパーツクリーナーやペーパーなどを使ってキレイに取り除きます。

    →ブレーキパッドの表面をサンドペーパーで研磨します。

  6. ブレーキパッドの厚さを測ります。

    →厚さが2㎜以下になる前に交換します。車検の際には交換しておくことをお勧めします。

    →厚さに極端な左右差がないか確認します。差が大きい場合、キャリパーの異常が考えられます。

  7. ブレーキパッドにディスクパッド専用のグリスを塗ります。

    →キャリパーと接触する部分など、金属と金属が触れる箇所にクッションの役割としてグリスを塗ります。

     ブレーキ鳴きのキーキー音やカタカタ音の抑制にもなります。

  8. キャリパーの上下についているパッドスプリングを外します。

    →パーツクリーナーを使用して清掃します。デコボコした部品なのでブラシを使って清掃しても良いです。

  9. スライドピンを外して清掃します。

    →付着しているグリスを取り除きます。

  10. スライドピンにラバーグリスを塗ります。

    →ラバーグリスを塗ることでスライドピンの固着を予防します。

  11. 清掃済みのパーツを順に取り付けて完了です。
    • スライドピンとブーツ
    • パッドスプリング
    • ブレーキパッド
    • キャリパー
    • タイヤ

ディスクブレーキ分解清掃


アジャスターのクリアランス調整

ブレーキシューとドラムの間にある隙間のことをシュークリアランスといいます。シュークリアランスが大きすぎるとブレーキシューがドラムに接触するまでに時間がかかりブレーキの反応が鈍くなります。

ドライバーがブレーキをかけようと思ってからブレーキが効き始めるまでの時間である「空走距離」に影響が出ますので、シュークリアランスを調整し隙間を小さくする必要があります。

左右のライニングの間にあるアジャスターを伸縮させることでクリアランスを調整します。
 
 →ブレーキペダルを踏んで自動調整機能にて最適化できるものもあります。
  細かい調整を行いたい場合、また自動調整機能が無い場合は手作業となります。

マイナスドライバーを使用してアジャスターのギアを回して伸ばしながらライニングを広げて隙間を詰めます。
自動調整機構を持たないドラムブレーキやドラムインディスクにはサービスホールがありますので、ドラムがついた状態でアジャスターを回すことが出来ます。
アジャスターは伸び方向にのみ調整可能で縮ませることが出来ない場合も多いです。

走行時、ドラムは押し付けられていますので、クリアランス確認も押し付けて行います。

ドラムが付いていないときはブレーキを踏まないように!!
ドラムを付けない状態でペダルを踏むとホイールシリンダーのピストンが飛び出します。

「クリアランス調整」→「ドラムをつける」→「ペダルを踏む」 を繰り返して、ドラムとライニングが軽く接触して音や重さが感じるぐらいを目指してシュークリアランスの調整を行います。

クリアランスが広すぎると、制動力の不足や空走距離の増加、サイドブレーキの不良に繋がります。
逆にクリアランスが狭すぎるとブレーキの引きずりに繋がってしまいます。

ホイールシリンダーのインナーカップ交換

ホイールシリンダーのインナーカップは定期的に交換しましょう。

ホイールシリンダー内は汚れなどを拭き取っておいてください。
ゴムの部分だけを交換します。
ホイールシリンダーをキレイに洗浄し拭き取り、素早くカップを装着します。
スムーズに動くかどうかを確認してください。


まとめ

前述のとおり、ドラムを外してさっと確認しただけでも点検整備記録簿の記録としてはブレーキ分解清掃を行ったことになってしまうのが現状です。

業者によって作業内容に違いがありますが、お客様の安全を第一に考え、細かい部品まで分解清掃を行い、点検整備をする業者を探して頂きたいと私たち整備士は考えています。

車検時には定期メンテナンスとしてブレーキ分解清掃を行うことをお勧めします。

費用を抑えたい気持ちもわかりますが、安全に走行出来る状態を作るために消耗品の交換など必要な費用は抑えないようにしてくださいね。

東伸自動車のブレーキ分解清掃の費用は下記のとおりです。

作業内容費用
分解清掃5000円~
ブレーキパッド交換5000円~(部品代別)
ライニング交換5000円~(部品代別)
インナーカップ交換5000円~(部品代別)

お客様が見積もりの内容を十分ご理解して頂いた上で作業を行いますので、ご不明点があればお気軽にご相談ください。
またブレーキ以外でも、走行していて気になる点がございましたら何でもご相談ください。
お客様が安心安全で快適な走行をするためのお手伝いを弊社スタッフにお任せ頂けたらと思います。
ぜひ東伸自動車へのご連絡をお待ちしております。


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有限会社東伸自動車 (担当:熊野・吉村まで)

電話:06-6916-3121