スズキ エブリィバン DA17V 走行中のトラブル~異音、変速しない、加速しないを門真の整備士が解決!~

お客様から「走行中、ウィーンという異音がしていたが、だんだんと音が大きくなり、その後変速しなくなった。今はもうアクセルを踏んでも進まなくなった。」というご連絡をいただきました。

「ウィーンという異音」「変速しなくなった」「アクセルを踏んでも進まない」一体何が原因でこの様な症状が出たのでしょうか?点火系統のトラブル、燃料系統、吸排気系、電子機器(各種センサー)のトラブル等、原因は様々考えられますが、まずはアクセルを踏むと加速するメカニズムから見ていきたいと思います。

● なぜアクセルを踏むと加速する?

車に乗るとアクセルを踏みます。踏めば踏む程加速します。当たり前の事ですが、ではアクセルを踏むとなぜ車が加速するのか、そのメカニズムを知ると「アクセルを踏む→加速する」がイメージしやすいかも知れません。

 エンジンは「混合気」「圧縮」「点火」、この3要素が正常に働いてはじめて加速します。アクセルペダルを踏み込むと、アクセルポジションセンサーが作動して、混合気(空気とガソリンを適切な量にして混ざり合わせたもの)をエンジン内に送り込みます。次にプラグに着火されて爆発が起こります。アクセルペダルの操作によってエンジンに供給される燃料の量が調整されますが、混合気が多くなればその分パワーが増し、エンジンの回転数は上がって行きます。

 エンジンからクラッチ、次にミッションへ、そしてディファレンシャルギア→ドライブシャフト→タイヤの順に伝達されてはじめて車は動きます。

混合気空気とガソリンが混ざり合ったもので、混合気は燃焼室へ送られます。ここに燃料フィルター・エアフィルターが設置されていますが、フィルターが目詰まりすると加速しない原因になります。
圧縮送り込まれた混合気は、シリンダー内のピストンで圧縮される事で高温・高圧になります。これにより燃焼効率が向上しますが、何らかの原因で正常な圧縮が出来ないとアクセルを踏み込んでもパワーが伝達されず加速が弱くなります。
逆に圧力が高すぎるとノッキングという現象が発生します。
点火適切なタイミングと強い火花(1万ボルト以上)により、混合気を燃焼させる。
エンジンを安定して稼働させ、車を加速させる為には、スパークプラグが適切なタイミングで点火し、ガソリンを燃焼させる必要があります。着火剤の役割を果たすスパークプラグや燃料を噴射するインジェクター等の部品に不具合があると加速されません。
電子機器コンピュータ内のシステムトラブルやコンデンサ異常等、センサーに何らかの不具合が生じてECUに正常な数値が戻らなかった場合、燃料供給を止めてしまったりして、加速されない事があります。
トランスミッション・トルクコンバーター変速機(トランスミッション)とエンジンを繋ぐトルクコンバーターに使用されているオイル(ATF)の劣化や漏れ等が原因で、加速しない事があります。

● 原因と診断

 今回の症状「異音がする」「変速しなくなった」「アクセルを踏んでも加速しない」という状況から、ミッション及びトルクコンバーターの故障と診断しました。今回の“スズキ エブリィバン DA17V”の場合、常時積載走行している点や、走行距離が20万㎞を超過している点等から自然劣化が考えられると判断しました。

 トランスミッション自体の重さや振動、外気の寒暖差等が原因でATマウントのゴムが劣化します。他にもトルクコンバーターに使用されているフルード(ATF=オートマチック・トランスミッション・フルード。オートマオイルと呼ばれる事もある)の中に金属粉やスラッジ(沈殿物、燃えカス)が蓄積される等して経年劣化が起こります。毎日ちょっとずつ蓄積されていき、ある日振動やシフトショックが大きくなったり、燃費の悪化という形で不具合が現れます。20万㎞となるとミッションにも大きな影響(トラブル)を与えている可能性があります。AT車のミッションの寿命はおおよそ15万㎞が目安と言われています。エンジン同様大きな負荷がかかるのがミッションです。20万㎞となると内部の部品の摩耗等もかなり劣化が進んでいるのではないかと思われます。

 また、トランスミッションとエンジンを繋ぐトルクコンバーターにはオイル(ATF=オートマチックトランスミッションフルード)が使用されていますが、これが漏れていたり劣化していると、エンジンに動力が伝わらず、アクセルを踏んでも加速しない、進まないと言った症状が発生します。アクセルをベタ踏みするドライバーさんに見られるケースで、ATミッションから焦げたような匂いがする事もあります。

 トルクコンバーターとは、AT(オートマチックトランスミッション)において、MT(マニュアルトランスミッション)のクラッチに相当する役割を果たしています。またクラッチだけでは無く変速機(トランスミッション)としての役割も果たしています。

 MT車は、クラッチを踏んで、シフトレバーを操作→ギヤを変えるが一般的ですが、1948年にトルクコンバーターがAT車に搭載されてからAT車はどんどん普及していきました。

 トルクコンバーターを構成する各パーツの中にはプロペラが付いていて、中ではオイル液体(ATF=オートマチック・トランスミッション・フルード)が送られていきます。その力でタービンが回転するのですが、オイルなのでMT車と違い大変滑らかでショックが少なく、エンジンからトランスミッションへスムーズに動力を伝え、タイヤを発進させます。

 MT車は一定の操作が必要です。「クラッチを踏む→シフトレバーを操作する→ギヤを変える。」慣れてしまえば何という事はない操作ですが、ギアチェンジに失敗するとそれなりの衝撃が発生します。エンストする事もありますし、何より車にダメージを与えます。それに比べてトルクコンバーターを実装しているAT車は発進時スムーズでギヤは自動で変速される為、技術も時間も要しません。

 良い事尽くめの様に見えるAT車ですが、一つ気を付けなければいけないのが、AT車はアクセルから足を離すとクリーピング(またはクリープ現象)と呼ばれる微速走行が起こる事です。このクリーピングが、トルクコンバーターがトルクを増大させる事により起こります。

※トルクとは固定されている回転軸(クランクシャフト)を中心に生み出される力の事を言います。
  エンジンがある回転数で回っている時に、どれだけの力でクランクシャフトを回しているかを表すのがトルクです。【出力=トルク×エンジンの回転数】という数式からもわかる通り、トルクが高くなると高出力になり、エンジンの回転数がそのままだったとしても、トルクで補う事が出来るという事になります。逆もまた真なりで、ガソリンエンジンの場合は高回転域で高トルクを発生させ、気持ちのいい走りを実現します。

 マニュアル車(MT車)の場合は、エンジンの動力をトランスミッションから切り離したり繋いだりするクラッチがありますが、AT車ではトルクコンバーターがオイルを使って動力を伝達し続けています。アイドリング中も、エンジンからの低回転がトルクコンバーター(トランスミッション)を通ってタイヤに伝わりますので、Dレンジ・Rレンジの時はクリーピング(微速走行)が起こります。

 簡単に言うと、MT車ではギアが組み合う事で変速し、クラッチがタイヤへ動力を伝達しています。その為、クラッチを離すと動力を伝達出来ない為、クリープ現象は起こりません。それに引き換えAT車は、トルクコンバーターを介して動力をミッションに伝えている為、エンジンが回転している動力の伝達を止める事は出来ません。その為、トルクコンバーターの中でオイルがウネェ~と常に動いている状態が続き、 これがクリープ現象となります。

 今回は、ザクっと一式「ミッション&このトルクコンバーターの丸ごと交換」です。

● 修理

一番安く済むのはATFの交換だけで済む場合です。ATFはオートマオイルとも呼ばれ、ミッション内部の潤滑や油圧に重要な役割を担っています。交換の目安はメーカーや車種によって異なりますが、凡そ2~3万㎞、または5~10万㎞に一度と言われています。このATFの交換で済むのであれば、数千円~数万円程度で済みますが、今回は経年劣化が原因ですので、ATFとは関係無くミッションとトルクコンバーター丸ごと載せ替えになります(=アッセンブリー交換)。

車からトルクコンバーターを降ろすと、ディファレンシャルギアが見えました!。

 ここ迄でもかなりの労力が必要です。トルクコンバーター自体がかなり複雑な構造をしている上に、ミッションを分解するという作業が伴いますので、時間がかかります。単純に、降ろしました~交換しました~という訳にはいきません。

● 結果

 交換から数日、お客様に様子を確認したところ、「大変良好!」「異音もなくなり力も出るようになり快調に走行出来るようになった。」との回答がありました。整備士が一番嬉しい瞬間かも知れません。思われる方は是非弊社までご連絡ください。まずはお客様自身のお車の状態をお知り頂く事からスタートするのはいかがでしょうか⁉

〒571-0044
大阪府門真市松生町6-21

有限会社東伸自動車
(担当:熊野・吉村まで)

電話:06-6916-3121