大阪 門真市の整備士がハイエースの構造変更について詳しく解説してみた!
トヨタ ハイエースは、元々大変ポテンシャルの高い車です。そのポテンシャルをベースに、仕事用に、またサーフィンや釣り・キャンピング等、趣味や余暇の時間を快適に過ごす為に、構造変更という手段をチョイスする人が今とても増えています。
もちろん、車検に通らなくては意味がありません。安全基準を満たし、所定の手続き等、全プロセスに加え、ハイエースの構造変更に関する事を今回はデータ等も交えながらお伝えしたいと思います。
●構造変更とは
登録を受けている自動車に対して、車の安全基準を遵守した上で「外寸」「重量」「乗車定員」「形状」「用途」等の変更を行う手続きの事を「構造変更」と言います。
車検に通らなくては意味がありませんので、安全基準を満たし、必要な書類を揃えた上で運輸支局等に車を持ち込み、構造等変更検査を受ける必要があります。強度検討書等の提出が伴う構造変更においては、車検証の型式の後部に「改」と記載され、車検証の備考欄にどこを構造変更したのか、部位の名称等が記載されます。
また自動車を改造した際の手続きには、「記載事項変更」と呼ばれるものもあります。外寸や重量の変化等が一定の範囲内である軽微な改造の場合が記載事項変更に該当します。
●構造変更の種類
構造変更にも様々ありますが、大別すると「軽微な変更」と「構造変更」に分ける事が出来ます。指定部品の装着(保安基準に適合しているもの)や、車両の寸法や重量が変更になった場合も、一定の範囲内であれば「軽微な変更」扱いとなりますので諸手続きは不要になります。
これに対して、定員変更、用途変更等は構造変更に該当します。以下ではそれぞれの内容について起筆致します。
◇軽微な変更
改造が許されている指定部品について一部を以下に記載致します。指定部品以外の部品の装着は違法となります。また指定部品であっても、溶接またはリベット以外の方法で装着しなければなりません。(=当該部品を恒久的に取り付けていない事)
指 定 部 品 | |
車体周り | エア・スポイラー、デフレクター、ルーフラック、フォグライト、 エアロパーツ類など |
車内 | オーディオ、空気清浄機、カーナビゲーション、無線機など |
操作装置 | 変速レバー、パワー・ステアリング、シフトノブなど |
走行装置 | タイヤ、タイヤ・ホイール |
緩衝装置 | ストラット、コイル・スプリングなど ※但し、大幅な車高調整により一定範囲を超えた場合、構造変更が必要になります。 |
排気系 | マフラー、排気管 |
その他 | 身体障害者用操作装置など |
また寸法の変更についても、下表の範囲(製作誤差の範囲)内であれば軽微な変更の対象になります。
長さ(㎜) | 幅(㎜) | 高さ(㎜) | 車両重量(㎏) | ||
乗用車 | 普通自動車 | ±30 | ±20 | ±40 | ±60 |
小型自動車 (二輪車以外) | ±30 | ±20 | ±40 | ±50 | |
軽自動車 | ±30 | ±20 | ±40 | ±40 | |
乗用車以外 | 普通自動車 | ±50 | ±30 | ±60 | ±100 |
小型自動車 | ±30 | ±20 | ±40 | ±60 | |
軽自動車 | ±30 | ±20 | ±40 | ±40 |
◇寸法の変更
車両寸法が上表の範囲を超える場合は、後任車検取得(構造変更)しなければなりません。
例えば、
・オーバーフェンダーを取り付けて、車幅が2㎝以上長くなった
・リフトアップして車高が4㎝以上アップした、またはローダウンして車高が4㎝以上下がった。
これらの場合は、軽微な変更では無く、構造変更の手続きが必要になります。
◇定員の変更
ハイエースの車種別定員は以下の通りです。
車 種 名 | 主な用途 | 定員 | 免許 | ナンバープレート分類番号 |
ハイエースバン (レジアスエース) | 貨物 | 最大9人 | 普通免許 | 4ナンバー ・1ナンバー |
ハイエースワゴン | 乗用 | 10人乗り | 普通免許 | 3ナンバー |
ハイエース コミューター | 送迎(乗合) | 14人乗り | 中型免許(8t限定解除) または大型免許 | 2ナンバー |
バンからワゴンへの定員変更もあれば、4ナンバー車を座席数を増設するタイプの定員変更もあります。今回は今人気の乗合から乗用への定員変更をベースに起筆したいと思います。
作業としてはリアシートの除去、車の製造タイミングによっては、シートベルトの変更等の作業が必要になります。乗車定員数が10人以下になる事で、車の用途が変更になり、それに伴いナンバープレートの分類番号も変更になります。本来中型免許が必要な車種が普通免許で運転する事が可能になりますので、活動の範囲が大きく広がります。
運転免許の種類 | 車両総重量 | 最大積載量 | 乗車定員 |
普通免許 | 5t未満 | 3t未満 | 10人以下 |
中型免許 | 5t以上11t未満 | 3t以上6.5t未満 | 11人以上29人以下 |
大型免許 | 11t以上 | 6.5t以上 | 30人以上 |
それぞれの免許で運転出来る代表的な車は以下の通りです。
免許の種類 | 代表的な車 | ハイエースの場合 |
大型自動車免許 | 大型バス・ダンプカー・タンクローリー等 | |
中型自動車免許 | 4tトラック・マイクロバス等 | コミューター |
普通自動車免許(AT限定免許含む) | 軽自動車を含む普通自動車 | バン・ワゴン |
◇装置の変更
自動車の構造変更には、大きく分けて10項目あります。
①車枠及び車体
②原動機
③動力伝達装置
④走行装置
⑤操縦装置
⑥制動装置
⑦緩衝装置
⑧連結装置
⑨燃料装置
⑩電気装置
自動車車を10箇所の部位に分けて、構造変更検査を行います。これらの項目に該当する構造変更で、且つ強度検討書等を提出した場合は、車検証の型式の最後尾に「改」の文字が加えられます。10項目の内、どこが変わったのかについては車検証の備考欄に記載されます。
【改造内容】 | |
車枠及び車体 | フレーム(車枠)を有する自動車であって、フレームの変更を行うもの |
モノコック構造の車体の変更を行うもの | |
二輪自動車から側車付二輪自動車に変更を行うもの | |
原動機 | 型式の異なる原動機に変更するもの |
総排気量を変更するもの | |
動力伝達装置 | プロペラシャフトの変更を行うもの |
ドライブシャフトの変更を行うもの | |
トランスミッションの変更を行うもの | |
駆動軸数の変更を行うもの | |
駆動軸への動力伝達方式の変更を行うもの | |
走行装置 | 走行方式の変更を行うもの |
フロント・アクスル又はリヤ・アクスルの変更を行うもの | |
軸数の変更を行うもの | |
操舵装置 | かじ取ハンドルの位置の変更を行うもの |
操舵軸数の変更を行うもの | |
リンク装置の変更を行うもの | |
かじ取操作方式の変更を行うもの | |
制動装置 | 制動方式の変更を行うもの |
緩衝装置 | 緩衝装置の種類の変更を行うもの |
緩衝装置の懸架方式の変更を行うもの | |
連結装置 | 連結器の取付け又は連結器本体の変更を行うもの |
燃料装置 | 燃料の種類を変更するもの |
電気装置 | 走行に係る原動機用蓄電池の変更を行うもの |
充電装置の変更を行うもの |
◇用途の変更
「定員の変更」でも起筆しましたが、構造変更する事で「車種」が変更になる場合があります。それに伴いナンバープレートや車検証だけでは無く、重量税や自賠責保険、それに車検期間にも変更が生じます。
自動車の種別 | ナンバープレートの分類番号 | ||
普通 | 貨物自動車 (普通貨物車) | 1 | 普通自動車のうち大型、または-中型の貨物自動車が適用され、貨物トラックや貨物バンがこの番号になります。 |
乗合自動車 (普通乗合車) | 2 | 普通乗用自動車のうち乗車定員が11名以上の乗用車が適用され、大型のバスやマイクロバスがこの内に入ります。 | |
乗用自動車 (普通乗用車) | 3 | 普通乗用自動車のうち乗車定員が10名以下の乗用車が適用され、一般家庭の乗用車の内2,000㏄以上の車がこの番号になります。 | |
小型 | 貨物自動車 (小型貨物車) (軽貨物車) | 4 | 貨物自動車でかつ小型のもの、この場合1トン車や2トン車のトラックやそれに類するバン等が含まれます。 |
6 | |||
乗用自動車 (小型乗用車) (軽乗用車) | 5 | 普通乗用車自動車よりも小型のもの、自動車の大きさが全長4.7×全幅1.7×全高2.0m以下、もしくは排気量2,000㏄以下の車がこれに含まれます。 排気量の差で購入時の車の値段や自動車税が変わってきますので、3ナンバーや5ナンバーで高い車や安い車を見分けるのはここが理由となります。 | |
7 |
●用途変更を伴う定員変更について
最近、注目を集めているのが「ハイエース コミューター(14人乗り)」を乗用(10人以下)にする定員変更です。コミューター自身はロケバスや送迎バスとして絶大な人気がありますが、中型免許が必要になります。そこで4列目シートを取り外し荷室として利用出来る様に構造変更する事で、普通免許で運転する事を可能にします。利便性や運用性が大きく向上しますが、ここで派生するのが用途変更を伴うという事です。
下表はハイエースのラインナップチャートになります。バン(商用)、ワゴン、コミューターでそれぞれの定員数や仕様を端的に表しています。なお、貨物には荷室の広さ等に条件があります。また4ナンバー登録が出来るのはハイエースではバンのみになります。
【貨物自動車の基準】
貨物自動車等とは、 ① 物品積載設備の床面積 自動車の物品積載設備を最大に利用した場合において物品積載設備の床面積が1㎡(軽自動車にあっては、0.6㎡、二輪の自動車でけん引される 被けん引自動車にあっては、0.2㎡)以上あること。 ② 構造及び装置 当該自動車の構造及び装置が3-1-1又は3-1-2に該当するものであること。 3-1-1 次の(1)から(4)までの基準に適合するものであること。 (1)物品積載設備の床面積と乗車設備の床面積 自動車の乗車設備を最大に利用した場合において、残された物品積載設備の床面積が、この場合の乗車設備の床面積より大きいこと。 (2)積載貨物の重量と乗車人員の重量 自動車の乗車設備を最大に利用した場合において、残された物品積載設備に積載し得る貨物の重量が、この場合の乗車設備に乗車し得る人員の重量より大きいこと。 (3)物品の積卸口 物品積載設備が屋根及び側壁(簡易な幌によるものであって、その構造上屋根及び側壁と認められないものを除く。)によっておおわれている自動車にあってはその側 面又は後面に開口部の縦及び横の有効長さがそれぞれ800㎜(軽自動車にあっては、 縦600㎜横800㎜)以上で、かつ、鉛直面(後面の開口部にあっては車両中心線に直角なもの、側面の開口部にあっては車両中心線に平行なものをいう。)への投影面積が 0.64㎡(軽自動車にあっては、0.48㎡)以上の大きさの物品積卸口を備えたものであること。ただし、物品積載設備の上方が開放される構造の自動車で、開口部の床面への投影面積が1㎡(軽自動車にあっては、0.6㎡)以上の物品積卸口を備えたものにあっては、この限りでない。 (4)隔壁、保護仕切等 自動車の乗車設備と物品積載設備との間に適当な隔壁又は保護仕切等を備えたものであること。ただし、最大積載量500㎏以下の自動車で乗車人員が座席の背あてにより積載物品から保護される構造と認められるもの、及び折りたたみ式座席又は脱着式座席(注6)を有する自動車で乗車設備を最大に利用した場合には最大積載量を指定しないものにあってはこの限りでない。 3-1-2 次の(1)及び(2)の基準に適合するものであること。 (1)隔壁等自動車の運転者席(運転者席と並列の座席を含む。以下「運転者席」という。)の後方がすべて幌で覆われた物品積載装置であって、運転者席と物品積載装置との間に乗車人員が移動できないような完全な隔壁があること。 (2)座席 物品積載装置内に設けられた座席は、そのすべてが折りたたみ式又は脱着式の構造のもので、折りたたんだ場合又は取り外した場合に乗車設備が残らず貨物の積載に支 障のない構造のものであること。 |
https://www.jidoushatouroku-portal.mlit.go.jp/assets/pdf/youtokubun.pdf?t=1674193960061
定員の増減は、用途の変更を伴う事が有り、それにより保険や車検期間等にも影響を及ぼします。定員変更する事で用途変更を伴った場合どの様な違いが生じるのでしょうか。ハイエースを車種毎に簡単にまとめると下表の通りです。
車 種 名 | 主な用途 | 定員 | 免許 | ナンバープレート 分類番号 |
ハイエースバン (レジアスエース) | 貨物 | 最大9人 | 普通免許 | 4ナンバー 1ナンバー |
ハイエースワゴン | 乗用 | 10人乗り | 普通免許 | 3ナンバー |
ハイエース コミューター | 乗合 | 14人乗り | 中型免許(8t限定解除) または大型免許 | 2ナンバー |
当項の最初に起筆致しました「ハイエース14人乗りを10人乗りに構造変更」すると、用途が「乗合から乗用」になります。
車検 | 自賠責 (12か月) | 自動車税 | 重量税 | 年間合計 | ||
初回 | 2回目以降 | |||||
2ナンバー(乗合) 11~29人迄 | 1年 | 1年 | 16,420円 | 33,000円 | 12,600円 (2t迄) | 62,020円 |
4ナンバー(小型貨物) | 2年 | 1年 | 12,850円 | 16,000円 | 12,300~ 16,400円 | 41,150~ 45,250円 |
1ナンバー(普通貨物) | 2年 | 1年 | 16,900円 (2t以下) | 16,000円 | 16,400円 | 49,300円 |
3ナンバー(乗用) | 3年 | 2年 | 11,500円 | 51,000円 ※1 | 16,400~ 20,500円 | 78,900~ 83,000円 |
税金面だけ見ると、商用車(4ナンバー、1ナンバー)の方が明らかにお得という事がわかります。乗合(2ナンバー)はやはり「人の運送の用に供する自動車」だけに車検が初年度から毎年受検する事になります。乗合・商用が1年に一回である点に比べると、乗用であれば2年に一回の受検で済みます。維持費や管理費等、トータルで考えるとどちらがお得か、というのは悩ましいところです。構造変更をライフスタイルや金銭面等トータルでメリットにする為には、多角的に検討してしっかりと計画する事が重要です。
●関連法令と満たすべき基準
○自動車検査証記録事項の変更及び構造等変更検査 道路運送車両法第67条第1項
昨今、自動車を利用するユーザーは仕事のみならず、趣味や余暇の為に構造等を変更する等多様化が進んでいます。その為、保安上の後退を招かない範囲で検査要件が緩和されました。
なお、自動車の構造・装置に関わる道路運送車両法の保安基準に適合しているかどうかの判断に関しては、装着した状態で保安基準の各条項に合格している事が必須となっています。
また、構造変更を行う事で、自動車検査証記録事項に変更が生じる為、変更があった場合、15日以内に自動車検査証の変更記録を受けなければなりません。
○道路運送車両法の保安基準(2023年6月現在)
【乗用自動車の安全基準の内容】
①排ガス測定の技術基準 「保安基準第31条」
②衝撃吸収式かじ取装置の技術基準 「保安基準第11条第2項」
③施錠装置の技術基準 「保安基準第11条の2第2項関係」
④乗用車の制動装置の技術基準 「保安基準第12条第2項関係」
⑤アンチロックブレーキシステムの技術基準「保安基準第12条第1項」
⑥衝突時における燃料漏れ防止の技術基準 「保安基準第15条関係」
⑦前面衝突の乗員保護の技術基準 「保安基準第18条第2項関係」
⑧側面衝突時の乗員保護の技術基準 「保安基準第18条第3項関係」
⑨内装材料の難燃性の技術基準 「保安基準第20条第4項関係」
⑩インストルメントパネルの衝撃吸収の技術基準 「保安基準第20条第5項関係」
⑪座席及び座席取付装置の技術基準 「保安基準第20条第6項関係」
⑫シートバック後面の衝撃吸収の技術基準 「保安基準第22条第7項関係」
⑬頭部後傾抑止装置の技術基準 「保安基準第22条第4項関係」
⑭座席ベルト取付装置の技術基準 「保安基準第22条の3第2項関係」
⑮運転者席の座席ベルトの非装着時警報装置の技術基準 「保安基準第22条の3第4項関係」
⑯外装の技術基準等 「保安基準第18条第1項第3号関係」
●ハイエースの定員変更による構造変更登録についての概要
ハイエースは大変ポテンシャルの高い車です。車種毎に持ち味がありながら、それでいてカスタマイズしやすい点もハイエースの特長です。ここではハイエースの特長を詳しく見てみたいと思います。
◇ニーズ・メリット
ハイエースの構造変更と言われて、すぐに思い浮かぶのは最近流行りの車中泊ではないでしょうか。ベッドキットを設置している人も多く、後部シートを折り畳めばバイクを積み込む事も出来、本格的なキャンピングカー仕様にされている方も少なくありません。足廻り等の改造を行わなくても十分に対応出来るのも、ハイエースのポテンシャルの高さ故ではないでしょうか。
ハイエースが色々な形でスペシャルになっていく、一人一人のハイエース、一人一人のカーライフ、それを実現してくれるのが、ハイエースがベース車として選ばれている理由ではないでしょうか。
では実際にハイエースはどの様に使われ、またどの様な点がハイエースの魅力なのでしょうか?
①商用、送迎等のプロユース ②キャンピングカーとして、アウトドア、レジャー等趣味として。 ③広い。たくさん荷物を積み込む事が出来る。 ④耐久性が高い。タフ。 ⑤たくさん荷物を積んでいても安定した走り。 ⑥カスタムしやすい ⑦汎用性が高い ⑧リセールバリューが圧倒的に高い。=結果的に低コスト ⑨ディーゼルタイプなら燃料費が抑えられる。=コスパがいい。 |
◇構造変更が求められる背景
ハイエースの良さ、求められる理由(ニーズ)について上述致しました。様々な用途に対応出来る車として不動の人気ですが、通常の車ならば、購入時に座席の配置を考慮する事等考えも及びません。もちろんハイエースの座席も既成であり、完成品ですが、例えばワゴンのグランドキャビンタイプは前から「2人・2人・3人・3人」の4列シートになります。ところが、同じワゴンでもGLは「2人・2人・2人・4人」の構成になります。同じ10人乗りでもシート構成に特色が有り、これがハイエースの持ち味とも言えます。そんなハイエースは構造変更で乗車定員を増減できる数少ない車種と言えます。
また、「社会の変化」がハイエースを時代のホープにしています。社会では、日々いろいろな変化が起こっています。最近ではライドシェアという言葉が使われ始めました。少し前にはカーシェアリングがシェアリングビジネスの先駆者として脚光を浴びていました。
日本社会の人口分布に変化が生じている事、また次なるシェアモデルとして、ライドシェアによる乗合ジャンボタクシー等が運行されています。他にもバスの代わりに駅や空港に行くタイプのライドシェアも存在します。
ライドシェアにはコミュニティバスよりも小型のハイエースが使用される事が多く、にわかに「構造変更」に脚光が集まる素因になっています。
また日本が「観光大国(立国)」を実現する為には、今後ホームシェアリングやライドシェアリングの法整備が進んでいく事が考えられます。日本版ライドシェアが整えば、今以上に、構造変更したハイエースが利用されるのではないでしょうか。その時代に順応した形になれるのもハイエースの魅力です。
◇統計
自動車検査業務量(年報)の推移は以下の通りです。(単位:台数)
平成30年 (2018年) | 平成31年 令和元年 | 令和2年 (2020年) | 令和3年 (2021年) | 令和4年 (2022年) | |
(2019年) | |||||
新規検査件数 | 4,513,942 | 4,392,438 | 4,185,390 | 3,916,400 | 3,868,050 |
継続検査件数 | 21,043,151 | 20,795,904 | 21,431,085 | 21,239,742 | 21,945,206 |
構造等変更検査件数 | 62,001 | 61,833 | 66,915 | 70,525 | 74,358 |
国土交通省「自動車関係統計データ」より抜粋
https://www.mlit.go.jp/common/001409454.pdf
新規検査件数は減少傾向、継続検査件数は横ばいに対して、構造等変更検査件数は上昇基調です。今年度も4月~7月の4ヶ月間で27,054台の構造等変更検査が行われている為(速報値)、年換算にすると80,000台を超える事になります。構造変更に今熱い視線が向けられている事が数字からも垣間見えます。
◇ハイエースの諸元
「用途変更を伴う定員変更について」では、ハイエースを「バン・ワゴン・コミューター」毎にグレードやボディの長さ等をタイプ別にまとめましたが、その他の諸元について以下にまとめます。
ハイエース VANの諸元表は以下の通りです。
ハイエース WAGONの諸元表は以下の通りです。
ハイエース コミューターの諸元表は以下の通りです。
◇リセール・市場動向
車を売却する時、走行距離や年式が価格に影響するのが一般的です。国産車を新車で購入した場合、初年度登録から3年、または走行距離約30000㎞で、購入価格の40~55%程度になると言われています。
ハイエースは1967年に発売開始して以来、商用車では販売倍数ダントツのトップを維持しています。発売開始から2011年までの累計生産台数は何と5,788,501台になります。トヨタの全車種の中でも7位に入ります。大ヒットやブームという言葉とは少し縁遠いかも知れませんが、言い換えればコンスタンスにずっと売れ続けている車種と言えます。
そんなハイエースにはタイプが3つ有り、サイズや種類が豊富な事は今まで述べてきた通りですが、それだけにパーソナルユースの人気に繋がっていると思われます。
キャンピングカー全体に占めるバンコン(ハイエースバン等を利用したキャンピングカー)率は30%以上。そして海外でも人気のハイエース、盗難車両(車種)第一位のハイエース(イモビライザーが標準装備されるまで)、ハイエースに纏わる形容詞はその人気ぶりを表しています。
中古車は新車と違って、一台一台状態が違います。中古車が100台あれば100通りの価値があると言って過言ではありません。なのに、安いハイエースはまず見かけません。ハイエースの中古車価格は値落ち幅も小さく、市場相場は不動の安定なのです。もっと言うならば、ハイエースは構造変更していてもリセールバリューがいい車と言えます。この事実がどれ程ハイエースに人気があるのかを裏付けています。
先に述べたニーズやメリットはそのままハイエースの人気(リセール価格)に直結しています。
①商用、送迎等のプロユース ②キャンピングカーとして、アウトドア、レジャー等趣味として。 ③広い。たくさん荷物を積み込む事が出来る。 ④耐久性が高い。タフ。 ⑤たくさん荷物を積んでいても安定した走り。 ⑥カスタムしやすい ⑦汎用性が高い ⑧リセールバリューが圧倒的に高い。=結果的に低コスト ⑨ディーゼルタイプなら燃料費が抑えられる。=コスパがいい。 等など |
●構造変更の実務
◇改造
今回は、門真の整備士が改造(構造変更)した際の店舗日誌からピックアップしてお伝え致します。
【作業内容】
ハイエース コミューター 14人乗り ↓ 10人乗りの乗用に構造変更 |
【イメージ】
お客様からお預かりしたお車の後部座席を取り外す作業を施します。
後部座席を取り外した事で、荷室が確保されています。
【安全基準を満たす為の作業】
今回は、2ナンバーのコミューターを構造変更(座席取り外し)して3ナンバー(乗用)にしました。
★貨物車両から乗用車両へ
定員の保護の観点から、「乗用自動車の安全基準の内容」を満たす必要があります。
ハイエース・コミューターの場合、製造されたタイミングで基準が異なります。
例えば、シートベルトに関しては、2010(平成22)年より前に製造された車両は、運転席後方の側面座席に3点式シートベルトが必要になり、それに伴ってアンカーの取付けも必要になります。また2020(令和2)年より後に製造された車両に関しては、座席ベルト非装着時警報装置(シートベルトリマインダー)が前列席(運転席と助手席)に必要です。通常のコミューターの助手席には装着されていませんが、オプション装備されているコミューターもありますので、要チェックです。
◇書類作成
構造等変更検査の手続きには「書類審査」と「実車検査」があります。必要書類を事前に準備して運輸支局に提出し、書類審査に合格後、車を車検場に持ち込み「実車検査」を受検します。
①事前書類審査(構造等変更の手続きに必要な書類の準備)
2019元年10月1日から、「用途等の変更をする使用過程車等の事前書面審査」が開始されましたが、構造変更の内容によって準備する書類が異なりますので、十分に確認した上で進めましょう。
新規検査、予備検査又は構造等変更検査を受検する自動車のうち、用途・乗車定員・車両総重量・自動車の種別を変更することにより適用される基準が変わるものについては、当該基準への適合性審査を適正かつ効率的に実施し現車審査時間の短縮が図れるよう、新規検査等に先立って、当該自動車の構造・装置の変更内容などを記載した新規検査等届出書を提出いただき、受理した届出書の事前書面審査が受検日の前日までに終了したものに限り現車審査を実施することになりました。
■新規検査等届出書とは
新規検査等届出書は道路運送車両法施行規則(昭和26年運輸省令第74号)第36条、第37条の2、第37条の2の2、第38条及び第42条に基づく書面になります。
提出書面に虚偽があった場合には、同施行規則同条の違反となり道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第110条に基づき罰則を課すことになります。
■新規検査等届出書の内容
当該自動車の構造・装置の変更内容に関する書面及び保安基準の適合性に関する書面などが必要です。
○新規検査等届出書(第1号様式)
○自動車検査証、自動車予備検査証、登録識別情報等
通知書又は自動車検査証返納証明書の写し
○諸元表又は車両諸元要目表
○外観の形状及び寸法(長さ、幅及び高さ)が明確に確認できる外観図又は写真
○重量分布計算、最大安定傾斜角度及び最小回転半径に関する書面
○騒音規制の適合性に関する書面
○排出ガス規制の適合性に関する書面
○保安基準各条項の技術的要件の適合性に関する書面
○その他必要な書面
対象となる車両は以下の通りです。
※1:対象となる自動車(二輪自動車、側者月二輪自動車及び大型特殊自動車は対象外)
① 使用の過程にある自動車(登録抹消中の自動車を含む)
② 自動車予備検査証の交付を受けた自動車
※2:対象となる変更内容(乗用自動車・貨物自動車には、派生した特種自動車を含む)
① 用途・乗車定員・車両総重量の組み合わせについて、次の区分を移行するもの
ア 乗車定員9人以下の乗用自動車
イ 乗車定員10人以上かつ車両総重量が5.0トン以下の乗用自動車
ウ 乗車定員10人以上かつ車両総重量が5.0トンを超える乗用自動車
エ 車両総重量が3.5トン以下の貨物自動車
オ 車両総重量が3.5トンを超え12.0トン以下の貨物自動車
カ 車両総重量が12.0トンを超える貨物自動車
② 乗車定員について、次の区分を移行するもの
ア 11人以上の自動車
イ 10人の自動車
③ 自動車の種別について、次の区分を移行するもの
ア 普通自動車
イ 小型自動車
ウ 軽自動車
(普通乗用から小型乗用に変更するもの、小型乗用から普 通乗用に変更するもの、小型貨物から普通貨物に変更するものは対象外)
独立行政法人自動車技術総合機構
https://www.paradise-mall.co.jp/yamasei/oshirase/H31/0108tutatu_jizensinsa.pdf
【必要な書類】
・新規検査等届出書(第1号様式)
・自動車検査証
・自動車損害賠償責任保険(共済)証明書
・点検整備記録簿
・自動車検査票
・自動車税納税証明書
※登録自動車は原則不要。
※地方税のシステムに反映されるまで相応の日数を要する事があり、確認出来ない場合は従来通り
証明書の提示が必要になります。
・自動車重量税納付書
※重量税印紙の要貼付、キャッシュレス決済の場合は不要。
・使用者の委任状(認印押印)
- 委任事項(自動車検査証記入・構造等変更検査)
・所有者の委任状
- 構造等変更検査に伴い、型式、車台番号又は原動機の型式を変更する場合
- 委任事項(変更登録)
・手数料納付書
※自動車検査登録印紙を貼付、キャッシュレスの場合はその旨記載。
・申請書(2号様式)
構造変更には、上記の書類以外にも何種類もの添付資料が必要になります。強度照明やパーツリスト、公認書類等は個人で対応するには膨大な時間と作業を要し、大変煩雑です。
◇登録・審査
事前書類審査に合格すると書類審査決裁終了」の連絡があり、「改造自動車審査結果通知書」が交付されます。通知書が届くまでの日数は1週間~10日程度ですが、ここに至るまでの計画をしっかり立てて取り組む事が大切です。
登録や審査に関しましては、国土交通省 近畿運輸局 大阪運輸支局のホームページも掲載されています。
https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/osaka/
尚、大阪府には「大阪運輸支局」「なにわ自動車検査登録事務所」「和泉自動車検査登録事務所」の3ヶ所があります。 https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/osaka/
なお、事前書面審査を受ける条件に該当しない場合は、実車検査と書類検査を同時に受検する事が出来ます。
平成7年11月22日から、軽微な変更については、構造等変更に係わる諸手続きを簡素化する事になりましたが、今回の構造変更は、車両の用途を変更しますので、「構造等変更検査」を受ける必要があり、「事前書類審査」が必要になります。
【自動車検査登録 総合ポータルサイト】
○定員変更のパターン
事前審査が必要 | 2ナンバー ⇒ 3ナンバー 4ナンバー ⇒ 3ナンバー |
事前審査が不要 | 3ナンバー ⇒ 8ナンバー 1ナンバー ⇒ 8ナンバー 4ナンバー ⇒ 1ナンバー |
では、次に車検場で実車検査を受検する時の手順です。
検査用印紙を購入して手数料納付書に貼付する。
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重量税を整備振興会で納付して重量税納付書に印紙を添付する。
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検査に必要な書類を運輸支局庁舎の窓口に提出して内容の確認をしてもらう。
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予約の確認を行うと共に、提出した書類を全て受け取り検査ラインへ。
順番が来たので検査場の中へ!
検査には無事、合格しましたので、重量税納付・変更登録申請・旧ナンバープレートの返却をしました。
①新しいナンバープレートを装着・標章ステッカーを貼り換え
②任意保険の契約先に新しいナンバーを連絡
③ETCの再セットアップをして終了です。
検査に合格すると、新たな車検証に「改」の文字が追加され、構造変更は完了です。
●費用
構造変更登録を伴う改造の依頼費用について解説いたします。ここでは大阪府門真市に御座います、弊社(東伸自動車)へ、ハイエースの構造変更登録をご依頼頂いた場合の費用をご案内させて頂きます。
価格は全て税込み
事前審査及び書類作成費用 | 110,000円 | |
構造変更登録費用 | 66,000円 | |
保安基準検査及び整備点検費用 | 33,000円 | |
その他 重量税・自賠責保険料・印紙代等の諸費用 | 車種により異なります。 | |
改造費用 | 改造内容により異なります。 | |
合計 | 209,000円+諸費用+改造費用 |
以上のような費用が、ハイエースの構造変更登録には必要となります。同じハイエースでも、改造内容やグレードによっては、上記の費用とは変わる事が御座いますので、詳しくは車検証をお手元に置いて弊社までお電話下さいますと、正確な費用をご案内申し上げます。大まかな目安としてお留め置き頂けますと幸いです。
●まとめ
今回は、トヨタ ハイエースの構造変更について、データ等も加味してお伝え致しました。門真で自動車整備業に携わり、時代と共に様々な車を拝見して参りました。一般的には、専用パーツが多く出回っている車種の方が、ドレスアップやカスタムは容易です。パーツの専門店も今では珍しくありません。今では新車からすぐにカスタムされる方もいらっしゃる程です。ただ、市販の車(今回お伝えしたのはハイエース)をベースにいろいろと手を加えた結果、車検に適応しない車になってしまっては意味がありません。
弊社ではもちろん違法改造はお受け致しません。安心してお客様のプラン、乗りたい車のイメージをお教え下さい。お客様の目的にピッタリ合ったお車を構造変更という技術で門真の整備士が実現いたします。
〒571-0044 大阪府門真市松生町6-21 有限会社東伸自動車 (担当:熊野・吉村まで) 📞06-6916-3121 |