トヨタ《ハイエース スーパーGL》LDF-KDH206V 【DPF(DPR)ランプが頻繁に点灯!!】どこに原因があるのか?門真の整備士が原因を究明!
今回お客様からお預かりしたお車はトヨタの「ハイエース SUPER-GL」です。ハイエースは発売当初「人を乗せる機能」と「荷物を運ぶ機能」の両方を併せもった貨客兼用車としてスタートしました。ここだけ聞くと何だか地味なイメージを持たれるかもしれませんが、時代の流れにマッチし時代と共に変遷を重ねてきた車種と言えます。
現在のハイエースは5代目にあたります。ワゴンのスーパーカスタム系はアルファードに統合されましたが、ミニバンも豪華な装備はそのままシフトしています。また商用車の原点回帰を思わせる装備も見られるのが5代目ハイエースになります。「貨物と人」その原点を大切にしつつも、乗用として多くのユーザーに愛されているのは、上質さと実用性が兼ね備わった上に安全性能にもしっかり配慮されているからではないでしょうか。
そんな多くの人に愛用されているハイエースが、今回DPF警告灯が点灯したとの事で入庫致しましたので、門真の整備士が原因究明にあたりたいと思います。

●お預かりしたお車
メーカー・ブランド | TOYOTAトヨタ ハイエースバン SUPER-GL |
型式 | LDF-KDH206V |
エンジン (パワートレイン) | 1KD-FTV(ディーゼルエンジン) 使用燃料:軽油 最高出力:106KW/3400rpm 最大トルク:300Nm/1200~3200rpm |
年式・初年度登録 | 2011年 |
走行距離 | 276179㎞ |
1KDエンジンは水冷直列4気筒ディーゼルエンジンとしてトヨタのラインナップの中では最大の排気量を誇ります。ハイエースのみならず、ハイラックスやランドクルーザーにも搭載されています。
●故障の症状
DPF警告灯が点灯
●故障箇所の特定と診断
お客様のお話しでは、DPFの警告灯が度々点滅し、とうとう点灯に変わってしまったとのお話しでした。まずは試運転してみます。繋いだ診断機のデータを見てみると、水温が明らかに下がってきますのでサーモスタッドが開いてしまっている状態だと思われます。オーバークールであると診断致しました。
サーモスタッド故障によるオーバークール(異常冷却)
→サーモスタッドの交換が必要
オーバークールになると、ススの発生量が増えたり、オイルの寿命が短くなる。
サーモスタットの寿命は走行距離10万㎞または約10年。

エンジン冷却水温(ラジエーター水温)の正常値は70℃~90℃が一般的です。エンジンから発生する熱を冷却水が吸収すると冷却水そのものの温度が上昇します。熱を吸収して高温になった冷却水は、ラジエーター内部を通過する時に走行風や冷却ファンの風にあたって冷却される様になっています。何らかの原因で水温が100℃を超えるとオーバーヒートを引き起こす状態になります。その為エンジンにはサーモスタットが装着されています。
サーモスタットの役割りは大きく分けて2つあります。1つはエンジンがオーバーヒートしない様に、エンジン内を循環している冷却水(LLC=ロング・ライフ・クーラント)を調整する事です。冷却水の温度を検知して、必要に応じてラジエーターに冷却水を送り込みます。また送り込む冷却水の量を調整する事で温度調整しています。
2つ目は、エンジンを効率よく暖める事です。エンジン始動時に冷却水を循環させてしまうと、エンジンが暖まるのに時間がかかってしまいます。その為バルブを閉じて、エンジン側とラジエーター側を切り離す事で、冷却水の循環を止めて効率的にエンジンが暖まる様になっています。
ところが今回のお車はこのサーモスタットのバネが開いたままの状態になっている為、低温の冷却水がエンジン側に循環し続け、結果ECUが「温度が低い(適正温度では無い)」と判断しました(=オーバークール)。
オーバークール(サーモスタットの故障)がどうしてDPFランプの点滅に繋がるのかという点ですが、DPFは以下の条件下で自動燃焼を行います。
【DPFが作動する条件】
- DPF内に一定量のススが溜まっている。
- エンジンの回転数が上がり、水温が75℃以上。
- 排ガス温度240℃以上
サーモスタットが故障すると冷却水温度も排ガス温度もが上がりませんので、ススを焼ききる事が出来ず、頻繁にDPFランプが点滅する様になります。
●故障修理の内容と費用
作業内容・部品等 | 工賃 | 部品代 |
---|---|---|
故障診断料 | 30,000円 | |
サーモスタッド交換 | 6,000円 | 1,930円 |
ラジエーターキャップ交換 | 730円 | |
LLC入替え | 8,000円 | 3,750円 |
DPF強制再生 | 36,000円 | |
DPFクリーナー | 11,000円 | |
試運転及びダイアグ診断 | 24,000円 | |
ショートパーツ | 2,000円 | |
合計 | 104,000円 | 19,410円 |
消費税 | 10,400円 | 1,941円 |
総計 | 135,751円 |
サーモスタッドは運転席の下にありますので、交換をする際は運転席を外す必要が有ります。各種配管やコンプレッサー、ベルトテンショナー、ブラケット等を外していきます。冷却水(クーラント)をドレンボトルから抜いてから、ラジエーターホースを外します。新しいサーモスタットに交換した後に冷却水を注入し、アイドリング運転で減った分の冷却水を補充します。ラジエーターのエア抜きをして、エンジンをかけて水温が問題無く上昇している事が確認できたらサーモスタットに関する修理は完了です。

最後にDPFクリーナーを注入して試走します。

強力な洗浄作用がありますので、DPFやセンサー、燃料インジェクターに燃料室等、他にも排気システム(触媒コンバーター、エキゾーストマニホールド、バルブ等)等を直接洗浄し、堆積したスス等をこすり落としてくれます。それぞれのパーツが本来の機能を取り戻しますので、警告灯が点灯するのを防いでくれます。添加後車を走行させると、DPFクリーンが燃料系全体に浸透していきます。
●修理後の様子
修理後はエンジンが暖まった状態での水温を確認します。冷却水が適正温度に達した事を確認出来ました。DPF再生(燃焼)も温度しっかり上がって20分程度で問題無く終了する事が出来ました。
●まとめ
今回はオーバークール(異常冷却)がDPFに影響を与えた結果のお修理でしたが、オーバークールは他にも様々な悪影響を起こします。わかりやすいところでは、「ヒーターが効かない」「エンストしやすくなった」「燃費が悪くなる」等があります。
酷い症状になると、オーバークールが「エンジンの焼き付け」を起こす事も有ります。冷えすぎなのに焼き付け?とお思いになるかも知れませんが、エンジンが冷えるとエンジンオイルの粘度が上がります(=オイルが硬くなる)。エンジンオイルが硬くなると潤滑油としての機能が低下し、結果エンジン内部(部品同士)の摩擦が増加し、増加した摩擦によってエンジンオイルの劣化が進んでいきます。
エンジンオイルは「潤滑・密封・冷却・洗浄・防錆」等の役割りを担っています。劣化したエンジンオイルではこれらの役割りも低下してしまいますのでシリンダーとピストンが癒着してしまったり、傷が入る等エンジンに負荷がかかる事で焼き付けに繋がってしまうのです。
まとめの冒頭「燃費が悪くなる」と起筆しましたが、その根拠はエンジンオイルが劣化すると「潤滑・密封・冷却・洗浄・防錆」が作用しない為に、エンジンの本来の性能が発揮されずに燃費の悪化に繋がると言う事です。
車の心臓であるエンジンに、サーモスタットは欠かす事は出来ません。サーモスタットの寿命は走行距離10万㎞または10年と言われています。今回のお車に使用されていたサーモスタットは、ワックスの膨張収縮を利用したシンプルなタイプになりますが、常にエンジンの熱などの影響を受ける過酷な環境で働き続けています。それだけに劣化(経年劣化)は避けて通る事が出来ません。
オーバークールはオーバーヒート程緊急を要する不具合ではありませんが、それでも放置すれば大きな代償(修理代)を支払う羽目になり兼ねません。意外と水温計見ていないと仰るお客様もいらっしゃいます。水温計の見かたに普段から慣れる事で小さな変化に気づけることもありますので、一度是非水温計(インパネ廻り)をご覧になってみて下さい。
完全暖機後の走行時に水温計に変化が無ければ(水温が安定しているなら)正常と判断出来ます。逆に走行すると水温が下がるが停車すると元に戻るようであればサーモスタットは開きっぱなしになっている可能性が考えられます。閉じっぱなしの場合は水温計が上がり警告灯が点灯します。この場合はオーバーヒートする可能性がありますので、注意が必要です。もし何かお車に違和感や不具合を感じられる場合は、お気軽に東伸自動車迄お問い合わせ下さい。

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