トヨタ《ハイエース DX GLパッケージ》DPF(DPR)ランプが点灯!! 原因は⁈DPFの燃焼温度が上がらない!! 門真の整備士が解決します!!

 今回お客様からお預かりしたお車はトヨタの「ハイエース DX  GLパッケージ」です。ベーシックグレードのDXに内外装がアップグレード(一部にスーパーGLの装備を採用)されたタイプで、DXとスーパーGLの中間グレードになります。スペック面では荷物を運ぶ事に特化したDXと大きな違いはありませんが、装備面では豪華さがプラスされています。

 DXは荷物を運ぶことに特化した・・・と言っても多くの人に愛されるのは、ハイエースが「貨客兼用車」としてスタートし、実用性に上質さが兼ね備わっているからではないでしょうか。そんなハイエースが、今回DPF警告灯が点灯したとのことで入庫いたしました。お客様のお話からDPFの燃焼温度に問題があるのではないかと思われますが、まずは門真の整備士がお車を拝見いたしましたのでまとめたいと思います。

メーカー・ブランドTOYOTAトヨタ ハイエースバン
DX  GLパッケージ
型式QDF-KDH201V
エンジン
(パワートレイン)
1KD-FTV(ディーゼルエンジン)
使用燃料:軽油
最高出力:106KW/3400rpm
最大トルク:300Nm/1200~3200rpm
年式・初年度登録2014年
走行距離78663㎞

 1KDエンジンは水冷直列4気筒ディーゼルターボエンジンとしてトヨタのラインナップの中では最大の排気量を誇ります。低回転域から高トルク・高出力を発揮し、パワフルで発進加速性能が卓越したエンジンです。ハイエースのみならず、ハイラックスやランドクルーザーにも搭載されているエンジンですが、ハイエースにはDPF(DPR)排気ガス浄化装置が追加されています。

 DPF警告灯が点灯。

 お客様のお話では、DPFの周期が段々早くなり、とうとう点灯に変わってしまったとのことでした。試運転すると共に、診断機のデータを見てみます。水温が明らかに上がってきませんので、DPFの燃焼温度が上がらないことが故障の原因であると診断いたしました。

DPFの燃焼温度が十分に上がらないため、ススを燃焼しきれず、強制再生を繰り返す状態となってしまいます。そのため、オイルの寿命も短くなります。

 ラジエーターは冷却水を冷やしエンジンのオーバーヒートを防いでくれるパーツです。通常ラジエーター水温(エンジン冷却水温)の正常値は70℃~90℃が一般的です。エンジンから発生する熱を冷却水が吸収してエンジンが高温になるのを抑えてくれます。熱を吸収して高温になった冷却水(クーラント)は、ラジエーター内部を通過する時に走行風とクーリングファンによって冷却されます。何らかの原因で水温が100℃を超えるとオーバーヒートを引き起こす状態になります。その為エンジンにはサーモスタットが装着されています。

 サーモスタットはエンジンとラジエーターの間に設置されており、役割は大きく分けて2つあります。1つはエンジンがオーバーヒートしない様にエンジン内を循環している冷却水(LLC=ロング・ライフ・クーラント)の温度を検知して、必要に応じてラジエーターに冷却水を送り込み、その温度を調整する事です。また送り込む冷却水の量を調整する事で温度を調整します。

 2つ目は、エンジンを効率よく暖める事です。エンジン始動時に冷却水を循環させてしまうと、エンジンが暖まるのに時間がかかってしまいますので、エンジン始動時はバルブを閉じて、エンジン側とラジエーター側を切り離します。そうする事で冷却水の循環を止めて効率的にエンジンが暖まる(早く暖まる)様にします。

 燃焼温度が十分に上がらないと、どうしてDPFに影響するのかという点ですが、DPFは以下の条件下で自動燃焼を実施します。

【DPFが作動する条件】

  • DPF内に一定量のススが溜まっている。
  • エンジンの回転数が上がり、水温が75℃以上。
  • 排ガス温度240℃以上

 冷却水温度も排ガス温度も上がらず、DPFが作動する条件である水温75℃に至っていない為、内部のススを焼ききる事が出来ない状態になってしまっています。結果、頻繁にDPFランプが点滅(その後点灯)する様になります。

作業内容・部品等工賃部品代
故障診断料30,000円
DPF燃焼温度異常の修理6,000円1,930円
ラジエーターキャップ交換730円
LLC入替え8,000円3,750円
DPF強制再生36,000円
DPFクリーナー11,000円
試運転及びダイアグ診断24,000円
ショートパーツ2,000円
合計104,000円19,410円
消費税10,400円1,941円
総計135,751円
2025年2月現在

 修理後、冷却水を注入し、アイドリング運転で減った分の冷却水を補充します。ラジエーターのエア抜きをして、エンジンをかけて水温が問題無く上昇している事が確認できたらDPF燃焼温度異常の修理は完了です。

 修理後はエンジンが暖まった状態での水温を確認します。冷却水が適正温度に達した事を確認出来ました。DPF再生(燃焼)も温度しっかり上がって20分程度で問題無く終了しました。

 今回は水温が上がらず、ススを焼き切る事が出来ず、結果DPFの燃焼温度に影響を与えたという内容のお修理でした。DPFの燃焼温度異常が発生すると、他にも「エンジンの出力低下」「ヒーターが効かない」「エンストしやすくなった」「燃費が悪くなる」など、さまざまな悪影響を起こします。

 酷い症状になると、「エンジンの焼き付け」を起こす事も有ります。“冷えすぎなのに焼き付け”と聞くとアンマッチなイメージですが、エンジンが冷えるとエンジンオイルの粘度が上がります ( =オイルが硬くなる )。エンジンオイルが硬くなると潤滑油としての機能が低下し、結果エンジン内部(部品同士)の摩擦が増加し、増加した摩擦によってエンジンオイルの劣化が進んでいきます。

 エンジンオイルは 「潤滑・密封・冷却・洗浄・防錆」等の役割を担っています。劣化したエンジンオイルではこれらの役割をしっかりと果すことが出来ず、傷が入ったりシリンダーとピストンが癒着する等してエンジンに負荷がかかってしまいます。その結果焼き付けに繋がってしまうのです。

 まとめの冒頭のDPF燃焼温度異常が引き起こす悪影響の中に 「燃費が悪くなる」 と記述しましたが、その根拠はエンジンオイルの劣化にあります。「潤滑・密封・冷却・洗浄・防錆」が作用しない為に、エンジンの本来の性能が発揮されずに燃費の悪化に繋がると言う事です。

 サーモスタットは冷却水の流れを管理して一定の温度を保持してくれるパーツです。その為車の心臓であるエンジンには欠かす事が出来ません。サーモスタットの寿命は走行距離10万㎞または10年と言われています。今回のお車に使用されているサーモスタットは、ワックスの膨張収縮を利用したシンプルなタイプになりますが、常にエンジンの熱などの影響を受ける過酷な環境で働き続けています。それだけに劣化(経年劣化)は避けて通る事が出来ません。エンジンは熱との闘いですので、サーモスタットはエンジンを守るために常に頑張ってくれています。

 DPFの燃焼温度異常はオーバーヒート程緊急を要する不具合ではありませんが、それでも放置すれば大きな代償(修理代)を支払う羽目になり兼ねません。普段から水温計の見かたに慣れる事で小さな変化に気づけることもありますので、一度是非水温計(インパネ廻り)をご覧になってみて下さい。

 一般的な水温計はHとCのマークだけの簡易的なものが殆どです。尚且つ適正範囲内の温度を保っている場合は、運転中殆ど針は動かない様に作られています。その為、完全暖機後の走行時に水温計に変化が無ければ(水温が安定しているなら)正常と判断出来ます。逆に走行すると水温が下がるが停車すると元に戻るようであればサーモスタットは開きっぱなしになっている可能性が考えられます。閉じっぱなしの場合は水温計が上がり警告灯が点灯します。この場合はオーバーヒートする可能性がありますので、注意が必要です。

 余談になりますが、冷却システムには3つのタイプがあります。「空冷」「水冷」「油冷」の3つですが、それぞれの特徴について以下に簡単にまとめます。

空冷最もシンプルな冷却方法で、外気(空気)を取り入れてエンジンを冷やします。エンジンブロックの表面に放熱ファンが設置されており熱を放出する。

ラジエーターが必要ない事からコストを抑える事が出来ますが、外気温に左右されるため適正温度を維持するのが難しく不安定です。また排ガス規制をクリア出来ない事から空冷エンジンを積んだモデル(バイク)が生産終了になるケースが多くみられます。

車ではかつてポルシェ911やフォルクスワーゲン・ビートルに空冷式が搭載されていました。
水冷ウォータージャケット(水の通り道)を利用してクーラントを循環させ、吸収した熱をラジエーターが空気中に放出します。外気温に左右されずまた冷却効果が高い為適正な温度管理が可能。車で最も使用されている冷却方法です。どうしても構造が複雑になり部品点数も多くなりますのでメンテナンスに時間も費用も掛かってしまいます。
油冷エンジンヘッドにエンジンオイルを散布して冷却を行います。水冷式程複雑な仕組みは必要ありませんが、水冷式の方が冷却能力が高い点や、環境問題が取りざたされる様になった頃から、油冷式は減少傾向にあります。

 水冷式エンジンは1890年代後半から自動車に搭載される様になりました。幾重もの変遷を重ね第二次世界大戦を経て、多くのメーカーが空冷エンジンから水冷エンジンにスイッチしていきました。ポルシェや本田技研工業などは長らく空冷エンジン搭載車の開発を続けていましたが、排ガス規制等が後押しとなり主流は水冷エンジンへと移行していく事になります。クーラント液(LLC)が普及した事も大きいのではないでしょうか。  水冷式は、冷却能力には秀でていますが、システムが複雑です。部品点数が増えますので、修理メンテナンスは大掛かりになりがちです。それだけにお車に違和感を覚えたり不具合が感じられる様であれば、お気軽に東伸自動車までお問い合わせ下さい。

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