●お預かりしたバイク
今回お客様からお預かりしたバイクはカワサキ/KAWASAKI W650というものすごくかっこいいバイクです。
| メーカー | カワサキ(KAWASAKI) |
| 型式 | EJ650AE |
カワサキW650とは川崎重工業が生産していたオートバイです。現在は既に生産終了しており、カワサキW650が販売されていた期間は1998年2月15日から2009年の4月まででした。1966年にカワサキが販売した「W1」というバイクをイメージでデザインされたネオクラシックオートバイです。気品のある美しいバイクですが、生産が終了した原因は排出ガスの規制です。W650の販売は終了しましたが、後継のモデルとしてW400 (2006年)、W800(2010年)が登場しています。W650の販売は、2009年4月にファイナルカラーモデルを販売して終了しています。
●故障の症状
今回のバイクの症状は夏のバイク乗りにあるあるの現象…。バイク液晶メーターの日焼けによる視認性悪化です。
バイクは日光を遮断して保管していない限り、運転時も保管時も常に日光にさらされている乗り物です。
家の中で窓際に何か置いていたら日焼けしたことありませんか?
バイクの液晶も、日光によって劣化するんです。もう日焼けしたメーターはほんっとうに見えにくい。
今回のお客様のカワサキW650の液晶メーターの日焼けはかなり進んでいました。 修理前の液晶がこちらです。

見え…ない!!!加工なんてしてませんよ!本当に見えないんです。ここまで見えないと、液晶メーターで確認することの出来る走行距離や時間も全く確認出来ないのでかなり困ります。
心配になる問題は車検に通らない可能性が高いということです。国土交通省によると、第46条において走行距離計の取付が規定されています。走行距離が見えないメーターのままだと車検が通らないということです。
(速度計等)
第46条 自動車(最高速度20キロメートル毎時未満の自動車及び被牽引自動車を除く。) には、運転者が容易に走行時における速度を確認でき、かつ、平坦な舗装路面での走行 時において、著しい誤差がないものとして、取付位置、精度等に関し告示で定める基準 に適合する速度計を運転者の見やすい箇所に備えなければならない。ただし、最高速度 35キロメートル毎時未満の大型特殊自動車及び農耕作業用小型特殊自動車にあっては、 原動機回転計をもつて速度計に代えることができる。 2 自動車(カタピラ及びそりを有する軽自動車、最高速度20キロメートル毎時未満の自 動車及び被牽引自動車を除く。)には、運転者が運転者席において容易に走行距離を確認 できるものとして、表示、取付位置等に関し告示で定める基準に適合する走行距離計を 備えなければならない。ただし、最高速度35キロメートル毎時未満の大型特殊自動車及び農耕作業用小型特殊自動車にあっては、原動機運転時間計をもつて走行距離計に代えることができる。
国土交通省 道路運送車両の保安基準(2024年3月29日)より引用
液晶メーターが日焼けしている方は早めの修理をおすすめします!
ちなみに、バイクの車検時に見られる項目は大きく分けて6つになります。
| 車検証に記載されている情報との相違・外観の確認 | 乗車定員・ハンドルのロック・ミラーの仕様とサイズ・タイヤ・オイル漏れ・各部のゆるみ・反射板などの各部分を点検するのがバイク車検の第一項目。 バイクの改造をしていると車検時に不合格になる場合もあります。車検の際には装備は純正のものに戻しておく事をおすすめします。 |
| 灯火類の確認 | 灯火類に含まれるのは、ヘッドライト、ブレーキランプ、ウインカー、ホーン。ここが正常に作動するかどうかを確認し、違法な改造が行われていないかもチェックします。 検査員の指示に従って灯火類を作動させ、目視によってきちんと作動していると判断されればそれでOKです。 注意する点は貼り付け式のウインカーです。貼り付けの位置が悪いと車検に通らないので、しっかり調整して臨みましょう。 |
| 排ガス・騒音の確認 | 排ガス・騒音の検査は専用の機械をマフラーの排気口に当て、適正値におさまっているかを確認します。 騒音時のチェックは、エンジンの回転数を上げて確認します。 車検可のマフラーであったとしても、ウールが摩耗しているとこの排ガス・騒音検査が通らない事もありますので、心配な方はマフラーかウールを交換しておく事を推奨します。 注意点はマフラーの穴。もしマフラーに穴が空いてしまっていたら、排ガス・騒音どちらの検査も通らない可能性が高いです。いつもと違う音になったら穴がマフラーに穴が空いていないか確認し、塞ぐか交換しましょう。 |
| スピードメーターの確認 | このスピードメーターの確認は他の項目に比べると比較的ひっかかりにくい箇所です。他の箇所に比べると常に目に入る箇所で不調や故障に気付きやすいからです。 バイクの前輪を検査ラインのローラーに載せて、ローラーの回転によって前輪を動かします。これによってスピードメーターも上がっていくので、バイクのスピードメーターが時速40kmになったタイミングでブレーキをかけます。この時にローラーが指し示す時速も40kmであれば問題ありません。 注意するのは、タイヤのインチ数を大幅に変えるような改造をしている時です。タイヤのインチ数が変わったのに同じスピードメーターを使用していると、スピードメーターにずれが生じてきます。※スピードメーターが付いているのは前輪のみなので、後輪のみをカスタムしている場合はこのズレは生じません。 |
| ブレーキ制動力の確認 | このブレーキ制動力の検査でも、スピードメーターの検査時に使用したローラーを使います。車輪をローラーに載せ回転させ、一定の速度になったタイミングでブレーキをかけます。ローラーが一定の時間内に止まるかどうかを見て、ブレーキの制動力を確認します。 この検査は前輪と後輪どちらもします。 この検査も普段バイクに乗っていて問題なければ特に車検に落ちる事はないと思います。 注意点はキーキーと音が鳴っていたり、ブレーキパッドの残量が少ない場合です。タイヤの制動力が落ちているかもしれません。 前輪と後輪、どちらか一方の制動力が落ちていると、この検査は落ちますのでご注意ください。 |
| ヘッドライトの光軸・光量の確認 | 最後のチェックはこの検査です。 この項目は車検におちる可能性が一番高いのではないでしょうか。 まずはバイクを水平にして、ヘッドライトをロービームにします。このロービームを光軸を検査する専用の機械に当て、光量と光軸を確認します。 光軸チェックは失敗する事が多く、事前に予備検査場で調整する事が重要です。基本的に車検場の近くに調整してくれる場所があるので、そこで事前に調整してから車検に臨むのがいいかもしれません。 この光軸チェックは失敗したとしても、1日3回まで受けなおす事ができます。3回とも失敗すると翌日以降に再度車検を受けることになります。 車検にここまで時間を取られない為にも、車検のできるだけ直前に調整してもらうことをおすすめします。 |
●故障箇所の特定と診断
ではここから実際に行っていった特定、診断、修理について書いていきます。
液晶パネルの日焼けによって文字が見えなくなる理由は、メーター内に内蔵してある偏光パネル(偏光板)が劣化しているからです。 まずは変更パネルについて説明します。まずそもそも、私たちが見ている液晶はこんな仕組みになっています。

偏光版は現代の人たちにとって日常的に使用しているものです。テレビやパソコン、スマートフォンにももちろん使用されています。偏光版の役割は簡単に言ってしまえばわたしたち人間の目に表示されている光(文字)が見えるように調整してくれている部品です。なのでこの偏光板がなければ私たちには何も見えなくなってしまうということ。液晶を直接見ても何も見えないです。

2枚の偏光フィルターを使用して、光を通してくれています。
日光、紫外線によってこの偏光フィルターが劣化することにより、文字が私たちの目には映らなくなってしまっているということです。
ではここから修理に入っていきましょう! バイクのメーターを外すにはまずライトをガパッと外して線も外していきます。

ねじを外してどんどん解体を進めていきます。


ここまで解体して偏光パネルを取り外してみると、かなり劣化が進んでいました。これは文字も見えない!
この劣化してしまっている偏光パネルを新品にこの後交換しましたが、この作業実はかなり大変で…
集中してやっていたら写真を撮るのを忘れてしまっていました…。
●修理後の様子
ひとまず偏光パネルを交換し、バイクに取り付けた後の修理後をご覧ください!
修理前とは全く違います!文字がはっきりと見えます。これで車検時も安心できます♪
お見積り料金
- 送料はお客様のご負担となります。元払いでお送りいただき、着払いでご返送いたします。
- 修理完了後、ショートメッセージまたはメールで、動画と画像で仕上がりをご案内申し上げます。
- 仕上がりに問題が無ければ、ご請求書を発行いたしますのでお振込みにて決済をお願いいたします。
- ご入金の確認が完了いたしましたら、着払いにてご返送いたします。
- 針を脱着した際にズレや動作不良が発生する場合が御座います。その際の責任は負いかねますのであらかじめご了承下さい。
- メーターを分解する際にケースや針、基板等が破損する場合が御座いますが、その際の責任は負いかねますのであらかじめご了承下さい。
●まとめ
紫外線が劣化させるものは人間、家電、家具、本…たくさんありますが、バイクも例外ではありません。
特に液晶メーターは日焼けしやすく、保管時にはしっかり液晶メーターを保護しているバイクでも、日光がメーターに当たれば当たるほど液晶メーターはどんどん劣化していってしまいます。長い目で見れば、バイクは保管時の時間の方が長い人の方が多いのではないでしょうか?日光にサンサンとバイクが当たっているなんて…液晶画面が…!焼けてしまう!!直射日光に当たらないようにバイクを保護してあげましょう!
今年の夏はかなり暑いですよね。暑すぎて暑さが落ち着くまではツーリングはお休み、というライダーさんも多いかもしれません。大事なバイクに次乗った時、液晶メーターが見えない!なんて事にならないようにお気を付けください。
もしバイクの液晶が薄い・見えない等のお悩みがございましたら、大阪府門真市の東伸自動車にご気軽にご相談ください! 快適で楽しいバイク生活を送っていきましょう!
● 補足① カワサキW650について
〇デザイン
カワサキW650は、丸いヘッドライトに長いマフラー、低めのシートが特徴的です。
エンジンの造形にこだわり抜かれています。デザイン当時では最新鋭のテクノロジーを使用したハイパフォーマンスなエンジン
〇エンジン
カワサキW650のエンジンは並列2気筒のエンジンを搭載。
649ccの空冷に4ストロークです。50馬力の最大トルク44Nm。ここまでのパワーがあると、都市部でも郊外でもツーリングを楽しむことができます。5速のトランスミッションも滑らかで、ギアも楽に変える事ができます。初心者からベテランまで楽しむことのできるようなエンジンです。
〇乗り心地
W650は軽量なフレームと良いバランスによって、初心者でも非常に扱いやすいバイクです。街中での走行ももちろん良く、曲がり角もスムーズ。サスペンションは前輪=テレスコピック式、後輪はデュアルショック式で、整っていない道でも走りやすくなっています。ブレーキシステムに関しては、前輪=ディスクブレーキ、後輪=ドラムブレーキで停止力も抜群です。
● 補足② カワサキWの歴史
カワサキWには多くのW650以外にも多くの種類が存在します。歴史を辿っていきましょう。
一覧がこちら。
| W1 | ・1966~72 ・650-W1、W1SAの2種類 |
| W2 | ・1967~68 ・W2SS(650-W1S)、W2TTの2種類 |
| W3 | ・1973~74 ・650RS-W3、W3Aの2種類 |
| W650 | ・1999~2009 |
| W400 | ・2006~2009 |
| W800 | ・2011~ |
W1
1966年に、K2をベースにしてW1が販売されました。ベースといえど、排気量はアップ、クランクシャトルの耐久性もアップしています。当時では異例の47ps/6500rpmでした。
W2
当時では圧倒的なW1を販売したカワサキでしたが、そこで満足せずにW2というモデルも販売し始めました。
W3
1973年にW3がリリースしました。
● 補足③ バイク保管時の注意
バイクを長期間保管する際の注意点がこちら
〇燃料系統
燃料添加剤を使用する
⇒燃料タンクがさびないように、燃料添加剤を使って燃料を満タンにする。(内部で空気に触れる空間があるとサビが発生しやすくなる為)
燃料系統を掃除
⇒キャブレターが搭載されているバイクはキャブレターの燃料を抜く。(長期間残ると樹脂の沈着物が発生しやすくなる為)
〇エンジンオイル
新しいオイルに交換する
⇒古いオイルを放置しておくと酸化が進み、エンジンの内部を痛める
〇バッテリー
バッテリーを終電する
⇒自然放電してしまうので、バッテリーは定期的に充電するか、バッテリーを外して面テナーに接続しておくのもお勧め。
〇タイヤ
空気圧を調整する
⇒長期間放置していると、タイヤが変形してしまう可能性がある。位置を定期的に変えるか、バイクスタンドでタイヤが地面に接地しない状態での保管がおすすめ。
〇サビ
・防さび処理
⇒金属部分のサビが発生してしまう部分には、防錆のスプレー等で保護する。湿度が高いとサビが発生しやすいので注意。
・保管場所
⇒直射日光や湿度が高い場所は×。通気性の良いカバーで覆い、屋内で保管がおすすめ。
〇全体を掃除
保管する前に、しっかりバイクを洗って乾かしてあげましょう。汚れや水分が残ったまま長期間放置するとサビ、カビの原因になります。
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