【ハイエース コミューター GL】 TRH/GDH/TRH 2ナンバーから3ナンバー、14人乗りから10人乗りへ構造変更!普通免許で運転!大阪府門真市の整備士による解説!
大型バスと違って、コミューターは小回りが効きますので(コミューターの回転半径は6.1m)、狭い山道や都会の道でも運転しやすくフットワークが軽いのが特長です。地方のコミュニティバスとしてや、また観光地や学校・企業の送迎用として大活躍でその人気は不動です。他にも手軽さ、利用出来る駐車場が多い、費用が抑えられる等のメリットもあります。
ただ、コミューターにも難点があって、よく耳にするのが「もう少し荷物が乗せられたらな」という点です。荷室確保の必要性から、門真の整備士のところに今回もコミューターがやって来ましたので、まとめたいと思います。
●今回の構造変更の依頼内容
お客様からのご依頼、1つ目は14人乗りを10人乗りにして欲しいと言う内容でした。
ハイエース コミューター ◇14人乗りから10人乗りへ➡ 荷室が広がる ➡ 乗合から乗用になる ➡普通免許で運転可能!! コミューター14人乗りのままだと中型免許8t限定解除または大型免許が必要 ◇2ナンバーから3ナンバーになる |
上記の通り、ハイエースコミューターの座席を取り除くと、「乗合」から「乗用」になりますので、ナンバープレートが変わり、普通免許で運転する事が可能になります。ドライバー職は常に人手不足が付きまといますので、普通免許で運転出来る様になるのは大きなメリットと言えます。
ハイエースにはコミューターの客室とほぼ同じ大きさで10人乗りのグランドキャビンがあるのに、なぜわざわざコミューターを構造変更するのかと疑問に思われる方もいらっしゃるでしょうか。
何が大きく違うかと言うと、ハイエースワゴンはガソリンエンジンのみのラインナップになりますが、コミューターは、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの両方が設定されています。
車 種 名 | 主な用途 | 定員 | 免許 | ナンバープレート 分類番号 | エンジン |
ハイエースバン (レジアスエース) | 貨物 | 最大9人 | 普通免許 | 4ナンバー 1ナンバー | ガソリン車 ディーゼル車 |
ハイエースワゴン | 乗用 | 10人乗り | 普通免許 | 3ナンバー | ガソリン車のみ |
ハイエースコミューター | 送迎 | 14人乗り | 中型免許(8t限定解除) または大型免許 | 2ナンバー | ガソリン車 ディーゼル車 |
そしてご依頼の2つ目が、業務用としての登録のご希望でした。
【事業用自動車等連絡書とは】 道路運送法、貨物利用運送事業法又は貨物自動車運送事業法による自動車運送事業、第二種利用運送事業の許可・事業計画変更の認可を受け、若しくは届出をしたもの、又は事業用自動車の代替であると確認したことを証するものである。 |
ではそれぞれの作業や手続き内容について起筆したいと思います。
◇14人乗りから10人乗りへ
お預かりしたお車はコミューター14人乗りです。これを10人乗りにするという事は、最後部の座席4席を取り除く事になります。
コミューターのバックドアを開けると、ギリギリのところまで座席が並んでいます。荷物を載せられるスペースが全く無く圧迫感が否めません。お客様のお車はGL(グレード)なので、最後尾の4列目は跳ね上げシートになっています。これを折り畳めば(跳ね上げれば)ラゲッジスペースは確保されますが、両サイドに折り畳んだ部分は使用出来ませんので、取り外す事で最大限「荷室」を確保する事が出来ます。この写真撮影の後、作業は無事に終了しました。
◇業務用としての登録
お客様が、事業の為にお車を使用される場合には、業務用ナンバーを取付ける必要が有ります。俗に「緑ナンバー」と呼ばれる車両がこれに当たり、「一般貨物自動車運送事業」を指します。旅客を乗せるので第二種運転免許が必要です。
【旅客自動車運送事業とは】 他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業は「旅客自動車運送事業」にあたり、事業種別ごとに国土交通大臣の許可が必要となります。使用する車両は事業用自動車と呼ばれ、ナンバープレートは緑色(軽自動車は黒)になります |
国土交通省九州運輸局「地域への公共交通導入ガイドブック」より引用
業務用として使用する場合には、登録や許可だけではなく構造要件が異なります。旅客自動車運送事業に必要な保安基準(乗車定員10人以下)は以下の通りです。
第22条の4 | 頭部後傾抑止装置等 | 運転者席・旅客3人分備えること |
第23条 | 通路 | 有効幅300mm以上、有効高さ1600mm以上(座席との距離2m未満は1200mm)の通路を設けること |
第25条 | 乗降口(直接、着席できる座席の乗降口を除く) | 有効幅600mm以上、有効高さ1600mm以上(座席との距離2m未満は1200mm)の乗降口を設けること |
ステップ高さ | ステップ高さは最下段450mm以下、その他400mm以下であること | |
すべり止め | 乗降口の階段はすべり止めを施したものであること | |
乗降用取手 | 乗降口には乗降用取手を備えること | |
第50条 | 採光 | 客室は適当な採光が得られること |
室内照明灯 | 客室には適当な照明を備えること | |
運転者の側面窓 | 運転者席の側面窓は、幅、高さが270mm以上開放できること | |
乗降口寸法(直接座席) | 有効幅470mm以上、有効高さ900mm以上あること | |
座席の間隔 | 200mm以上あること | |
扉開放表示 | 扉開放方法を表示すること |
国土交通省「旅客運送事業用自動車(緑ナンバー)に対する保安基準の整理」より引用
上表の構造要件を満たした上で、必要書類を作成します。そして営業ナンバーを取得する為には、認可基準を満たす必要があります。車庫の確保はもちろんの事、車の台数に比例して運行管理者資格を有する人を雇わなければならなかったり、農地や市街化調整区域ではない事を確認しなければいけなかったりと、こちらの手続きも一筋縄ではいかないくらいの事務量です。
一般貨物運送事業経営許可申請書や事業計画書等を揃えた後は、法令試験を受験し運輸局での審査を待つ事になります。運輸支局から運送業許可書が交付される迄には、約4ヵ月を要します。登録免許税を収め、管理者を選任しやっと緑ナンバーを取得する事が出来ます。
●構造変更の手続き
次に構造変更する為の手続きについて起筆したいと思います。運送業許可書を交付してもらう迄のプロセスも大変ですが、構造変更の手続きもかなりの事務量になります。
構造等変更検査の手続きには「書類審査」と「実車検査」があります。必要書類を事前に準備して運輸支局に提出し、書類審査に合格した後予約を取って、車を車検場に持ち込みます。これが実車検査になります。
①事前書類審査(構造等変更の手続きに必要な書類の準備)に必要な書類 ・新規検査等届出書(第1号様式) ・自動車検査証 ・自動車損害賠償責任保険(共済)証明書 ・点検整備記録簿 ・自動車検査票 ・自動車税納税証明書 ※登録自動車は原則不要。 ※地方税のシステムに反映されるまで相応の日数を要する場合があり、確認できない場合は、従来通り証明書の提示が必要になります。 ・自動車重量税納付書 ※重量税印紙を貼付、キャッシュレス決済の場合は不要。 ・使用者の委任状(認印押印) - 委任事項(自動車検査証記入・構造等変更検査) ・所有者の委任状 - 構造等変更検査に伴い、型式、車台番号又は原動機の型式を変更する場合 - 委任事項(変更登録) ・手数料納付書 ※自動車検査登録印紙を貼付、キャッシュレスの場合はその旨記載。 ・申請書(2号様式) 上記の書類にプラスして、構造変更には何種類もの添付資料が必要になります。 ・外観の形状及び寸法が明確に確認出来る外観ず又は写真 ・重量分布計算、最大安定傾斜角度及び最小回転半径に関する書面 ・諸元表または車両諸元要目表 ・保安基準各条項の技術的要件の適合性に関する書面 ・強度証明書 ・パーツリスト ・公認書類等 ②実車検査 事前書類審査に合格後「改造自動車審査結果通知書」が送付されてきます。 予約を取り、車を車検場に持ち込んで実車検査を受けます。 ・検査用印紙を購入して、手数料納付書に貼り付ける。 ・重量税を納付して、納付書に貼り付ける ・検査に必要な書類を運輸支局庁舎の窓口に提出して内容を確認してもらう。 ・提出した書類を全て受け取って検査ラインへ。 ③合格したら・・・ ・重量税の納付 ・変更登録申請 ・旧ナンバープレートの返却 ・新しいナンバープレートを装着 ・標章ステッカーを貼り換える ・任意保険の契約先に新しいナンバーを連絡。 ・ETCの再セットアップをして完了 |
今回の構造変更は、単に座席数を取り外すだけではなく、業務用として機能する様に作業する必要がありました。何より大切な事、それは乗員の命です。命を守る為にミスの無い確実な作業を実施する必要がありますので、作業の際は心が引き締まる思いになります。特に構造変更は、作業に加え書類関係の作業も膨大で、お客様のご希望やご意向を見逃していないか、何度も確認をしながら進めています。
お客様にとって使い勝手が良くなる様に、そして私どもが培ってきた経験とノウハウを最大限お客様の為に活かせるように、作業にそして整備に取り掛かりたいと思っております。構造変更だけではなく、整備・メンテナンス・お車に関するお困り事、何でもOKです。お客様のお車が常に適正な状態である事が大切です。車に関して万が一不安な気持ちをお持ちでしたら、お気軽に弊社までお問い合わせ下さい。門真の整備士がお客様のお車に真摯に向き合います。
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